近づく出水期、「3密」必至の避難所 自治体は感染症予防対策を急いで

西日本新聞 くらし面

新局面 災害の時代―後悔しない備え⑬

 出水期が近づき、心配される避難所の防疫対策。内閣府と厚生労働省の課長の連名で今月7日、2度目の「避難所における新型コロナウィルス感染症への更なる対応について」(http://www.bousai.go.jp/pdf/hinan_korona.pdf)をより具体的に発表しました。長野市、千葉市など昨年の被災自治体は既にマニュアルなどを改訂しています。

 九州では27日現在、自治体が具体的に対策を打ったという報道が聞こえてきません。連載第2回、危機管理のさしすせその「さ」、最悪の想定で自治体は備えを始めているか心配です。

 最悪のケースは、クラスターを避難所で発生させ犠牲者を出し、貴重な医療人材も大量投入する事態でしょう。防疫を考慮した構造になっていない体育館などの避難所で「3密」を避けパーソナルディスタンスを保つのは至難の業です。

 出入り口などの動線とトイレを複数に分けることは必須条件。私なら部屋は発熱などの疑陽性者用、妊婦や特定疾患者を含めた災害弱者用、それ以外の人用の最低三つに分けたいです。それでも安全と言えないのがつらいところです。

 もしご自分の指定された避難所がそうでなければ、自治体に避難所を増やすよう要望できないか、地区住民で早めに相談してください。体育館以外に校舎も使えるようなら、学校管理者がいない夜中でも利用できるよう、鍵の管理法も決めておく必要があります。

 それがだめなら、移動式トイレだけでも事前に設置してもらう。今なら間に合います。建物ごとに、私のようなリスクマネジメントの専門家だけでなく、感染症対策の専門家の助言も欲しいところです。

 豪雨の際、指定避難場所に行って危機を逃れた後に身を寄せる避難所は、自治体が防疫対策を何もしていない場合、できるだけ避けるほうが賢明です。自宅2階や、親戚や知人の家を頼った方が3密の避難所より安全です。エコノミークラス症候群の予防対策をすれば、車中泊の選択肢もアリです。地域や家族ごとに条件が異なる中、生き残るために各自が事前に考えて備えるしかないのです。

 ただ、自治体が浸水想定区域外のホテルの個室を家族ごとに借り上げる防災協定を結べれば話は全く異なります。ダイヤモンドプリンセスの乗客を受け入れた「勝浦ホテル三日月」の運用をマニュアル化し共有しましょう。さらに熊本地震でも使われたテントやキャンピングカーでの避難など複数の防疫手段を自治体が整えることが必要です。

 なお、自治体が新たな手を打つ場合は早く変更事項を決め、住民への告知が急務です。出水期ギリギリになるようでは通知漏れが出るのは必至。報道機関に協力要請するなど何度も告知する手間と時間をかけるべきです。(九大准教授 杉本めぐみ)

 ◆備えのポイント 避難所には非常用持ち出し袋に加え、消毒アルコール、マスク、せっけん、歯磨き、コップ、箸、ゴム手袋など持参を。健康保険証、常備薬とお薬手帳や体温計も各自で。妊婦の方は母子手帳を。豪雨が去り安全が確保できれば、できるだけ避難所に行くのは避けることを考えた備えが防疫面では賢明です。避難所からそのまま別施設へ移動、入院する場合も考えて荷造りを。

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府生まれ。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て、2014年度から九州大助教、20年度から准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。在インドネシア日本国大使館経済班員として2004年スマトラ沖津波の復興と防災に携わる。「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」メンバーとして福岡県防災賞(知事賞)受賞。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

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