重症者医療「ぎりぎりの状態」 人材や機器、集約の動きも

 新型コロナウイルスの感染者数の伸びは一時期より鈍化傾向がみられ、軽症者のホテル療養も進むが、重症患者に対する医療態勢への不安は拭えない。現場からはベッドや医療機器はもちろん、専門知識を有する人材の確保を訴える声も上がる。限られた医療資源で効率よく治療に当たろうと、自治体が重症者を重点的に受け入れる病院を指定する動きも出ている。

 九州で最も感染者数が多い福岡県では、4月30日時点で人工呼吸器や人工心肺装置「ECMO(エクモ)」が必要な重症が16人、酸素投与などが必要な中等症が54人。県の担当者は「重症者は基本的には感染症指定医療機関や大学病院が受け入れている」と説明する。

 県内に感染症指定医療機関は12カ所あり、感染者を受け入れる病床は150。そのうちどの程度が重症者に対応できるのかについては「他にどんな状態の患者が入院しているかなどで変動するので、はっきりとは言えない」という。

 クルーズ船入港の影響で感染者が増えた長崎県内には対応する病床が約100ある。担当者は「今後は900床を目指して確保を進め、そのうち30床で重症を受け入れられるようにしたい」と話す。

 医療機器も欠かせない。福岡県の調べでは、使用中の数を除いた県内の人工呼吸器は600台、エクモは50台(ともに4月上旬時点)程度。他の疾患に新たに使われることもある。

 数の上では余裕があるようにも見えるが「特にエクモに関しては、専門的な知識のある人材が多く必要で、装置があるからといって全て使える環境ではない」。エクモの経験豊富な医師でつくる「エクモネット」のメンバーで福岡大病院救命救急センター医師の星野耕大(こうた)さんは、そう説明する。「重症患者への医療は既にぎりぎりのところでやっているのが現状」。平時ならエクモを使ったであろう患者に使えなかったケースも出ているという。

 導入には医師や看護師、臨床工学技士など10人ほどが必要で、装置のトラブルや合併症に備えて24時間態勢で管理しなければならない。星野さんは「エクモを持っていても使用経験が少なく慣れていない医療機関もある」とした上で「経験や人材が豊富な医療機関が集中的に受け入れた方が効率がよく、多くの患者が高水準の治療を受けられる」と訴える。

 現場の声を受け、自治体が重症患者を重点的に受け入れる病院を指定する動きも広がり始めている。専門性の高い医療従事者を確保して防護服なども手厚く配備し、院内感染のリスクを抑えながら集中して治療に当たるのが狙いだ。

 熊本県は県北、県央、県南、天草の4地域に一つずつ設定した。兵庫県は3病院を指定し、指定された病院は通常の診療機能の一部を縮小。その分は近隣の病院が補っているという。同県の担当者は「役割を分担することで、地域医療の危機を乗り切りたい」と話している。 (斉藤幸奈)

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 人工心肺装置「ECMO(エクモ)」 血液を管で体外に導き出して酸素供給する機器で、人工呼吸器でも回復が難しい患者に使用。日本集中治療医学会などの4月20日時点の集計によると、重症患者90人に使用され、治療を終えた52人のうち35人は回復。17人は亡くなった。

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