世論の怒り背に対中強硬論 トランプ氏

決戦の視座(中)

 「中国はコロナに関する正確な情報を出さず、信用ならない」(ワシントン近郊在住の30代男性)。新型コロナウイルスによる死者が6万人を超え、失業者も膨れ上がる米国で、国民の6割以上が中国への怒りや不信を募らせている。トランプ大統領は高まる反中感情を半年後の大統領選につなげようと、対中政策を争点化する構えだ。

 トランプ氏は中国の通商政策は不公平だとして是正を公約に掲げる。1期目には中国に追加関税を課して貿易協議で譲歩を迫り、部分合意に達した。大統領選では農産物などの対中輸出拡大を功績として誇示するはずだった。

 ところがコロナ禍で状況は一変した。1月末には感染が広がっていた中国からの入国禁止措置を早々に打ち出したが米国での感染拡大を防げなかった。「友人」と呼ぶ習近平国家主席の対応を一時は評価したことも非難の的に。貿易交渉の成果は吹き飛んだ格好だ。

 責任回避を図るトランプ氏は、感染拡大の原因は「情報開示に非協力的な中国にある」と中国への強硬姿勢に転じ、追加関税など報復措置もほのめかす。

 さらにマスクなどの医療品を中国製に頼る現状を問題視し「製造拠点を米国に戻す」と繰り返し訴える。その狙いは野党民主党の大統領候補指名を固めたバイデン前副大統領への揺さぶりだ。バイデン氏は自由貿易推進論者として知られ、副大統領時代に息子が中国とのビジネスで報酬を得ていたとの疑惑もくすぶる。

 トランプ陣営は大統領選の行方を左右する激戦州で、バイデン氏の対中姿勢を批判するCMを放映。「バイデン氏が勝てば中国に再びつけ込まれる」と弱腰批判に余念がない。対するバイデン陣営は「トランプ氏こそ独裁的な国家に甘い」と反論。中国を巡る批判合戦は早くも過熱している。

 他方、コロナウイルスを一時「中国ウイルス」と呼ぶなどトランプ氏の“嫌中”姿勢がアジア系住民への差別を誘発したとの指摘もある。黒人など人種的少数派の支持拡大を課題とするトランプ氏に不利に働く恐れもある。 (ワシントン田中伸幸)

関連記事

PR

PR