コロナ禍が視覚障害者も直撃 鍼灸院、支援団体も経営危機に

西日本新聞 大坪 拓也

 新型コロナウイルスが、視覚障害者の暮らしに影を落としている。外出を控え、人と距離を取るよう求められる中、はり・きゅうなどを生業にする人の収入は激減。支援団体も外出補助サービスなどを提供しづらく、運営が危ぶまれる。感染の広がりは社会的弱者を厳しい状況に追い詰め、苦境を脱する道筋を描くのは容易ではない。

 「こんなのは想像したこともない。長引けば立ちゆかなくなる」。弱視の浜田義雄さん(66)は福岡市博多区の自宅マンション内の鍼灸(しんきゅう)院で声を落とした。

 開業して37年。常連客10人を抱え、鍼灸院や訪問先で施術していた。だが福岡県内で感染が増え始めた3月下旬から断りの連絡が相次ぎ、常連は2人に減った。県内の感染者数は減少傾向にあるが、客足が戻る見通しはない。「お客との世間話が懐かしい」

 鍼灸院は休業要請の対象外だが、4月の売り上げは前年の約3割の10万円ほどに減った。障害年金も家賃など固定費に大半が消える。国の事業者向け給付金に頼りたいが電子申請は困難で、不安は募る一方だ。

 施術に不可欠なマスクの入手には苦労する。薬局の売り場を探すうちに他の客に先を越され、手ぶらで帰ったり、陳列棚を手探りしていると店員に注意されたりした。ようやく最近、鍼灸師団体を通じ10枚を購入したが、近くの店は品切れが続き、「手持ちがなくなったら困る」と漏らす。

 厚生労働省の調査によると、鍼灸師など「専門的・技術的職業」は、就労する視覚障害者の3割を占める最多の職種。健常の同業者との競合が進む中、感染拡大で経営悪化を招く懸念もある。日本視覚障害者団体連合は4月22日付で、国に所得補償などの支援を求める要望書を提出した。

 高齢者や障害者を支えるNPO法人「福岡市視覚障害者サポートセンター」にも、外出自粛の余波が直撃する。県内最大規模の団体で、高齢者ら約230人の暮らしを支える。主な支援は、外出する視覚障害者にヘルパーが付き添う「同行援護」で、サービス収入の9割超を占める。

 視覚障害者は周囲の物に手を当てて状況判断することも多く、「ウイルスに触るかも」と外出するリスクに敏感な人が多いという。3月下旬から買い物だけでなく通院も極力控えるようになり、4月の援護件数は554件で、前年比で4割以上減った。

 同センターの三浦元浩事務局長(44)は「運営基盤が揺らげば人員を確保できず幅広いサービスも提供できなくなる。終息後も支援継続できるよう資金繰りに努力するしかない」と危機感を強める。 (大坪拓也)

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