「荷物は玄関先に」“非対面”の配達広がる 背景に業界の苦境も

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、物流業界で感染防止のため配達員が顧客に対面せず荷物を届ける取り組みが広がっている。あらかじめ配達場所を指定してもらって再配達の手間を省く「置き配」の導入も本格化。外出自粛や店舗休業でインターネット通販の需要が増え、配達員の人手不足に拍車が掛かる中、業務維持のため効率化を迫られている側面もある。

 「荷物は玄関先に置きます。サインは結構です」。配達員はインターホン越しにそう言うと、荷物を玄関ドアの前に置いて姿を消した。ヤマト運輸が2月中旬に始めた取り組み。広報担当者は「配達員と接触したくないというお客の声に対応した」と説明する。

 日本郵便も4月15日、対面で届けていた荷物や書留郵便物を、インターホンなどで届け先を確認した上で玄関先に置くサービスを開始。ネット通販大手のアマゾンジャパンも3月から、購入者が商品の配達場所を指定できる「置き配」を本格的に展開している。

 荷物を手渡す手間や時間を省くことは、配達員の負担軽減にもつながる。「非対面」の配達が広がる背景には、限られた人手で需要の急増に対応せざるを得ない業界の苦境も透ける。

 日本通信販売協会によると、3月以降、食料品や雑貨の売り上げが前年を上回る会員企業が増えている。消費行動に詳しいニッセイ基礎研究所の久我尚子主任研究員は「学校の一斉休校で子どもが家にいて外出しにくい親や、感染を避けたい高齢者のネット通販の利用が増えている」と分析。今後も「増加傾向は継続する」と予測する。

 だが、物流業界はただでさえ、ネット通販の普及などで配達員の人手不足が課題だった。全日本トラック協会の2018年の調査では、7割の企業がドライバー不足を訴えた。物流各社では、従業員に感染者が出て営業所が閉鎖されるケースも相次いでおり、人手不足は深刻さを増している。

 非対面での配達は、荷物の受け取りを巡ってトラブルが起きかねないとの懸念も根強い。ただ、「置き配」の荷物の盗難を補償する保険商品の開発も進むなど、普及に向けた環境は整いつつある。

 国土交通省物流政策課は「『置き配』には安全性や個人情報保護の課題もあるが、再配達のコストを抑える重要な取り組みだ。コロナをきっかけに消費者が非対面の受け取りに慣れれば、導入がさらに進む可能性がある」としている。 (森井徹)

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