中国とコロナ 危機便乗の行動を控えよ

 中国の習近平指導部にとって新型コロナウイルスとの「戦争」に勝利したことを国内外に宣言する狙いがあるのだろう。

 ウイルスのまん延で延期されていた全国人民代表大会(全人代)を22日に開幕すると発表した。国会に相当し、その年の予算や主要政策を示す重要会議である。

 これまで中国は多くの国にマスクなど医療資材の支援を行ってきたが、感謝よりも警戒や批判の声の方が聞こえてくる。

 なぜか。感染の爆発的拡大は中国から始まったにもかかわらず、ウイルス抑制の「成果」ばかりを誇示しているからだ。とりわけ初動の情報公開に問題があったのは歴然としている。中国がその事実を率直に認め、反省と教訓を世界のために生かす姿勢を示すことこそ、国際社会が求めている。

 世界中がコロナ対応に追われる中、その混乱に便乗するかのような振る舞いを国内外で見せていることも看過できない。

 例えば、香港では民主派著名人が一斉に逮捕された。香港基本法の解釈も変更し、中国当局による香港政策への直接介入を可能にした。中国政府の意向を受けたものとみられる。

 感染防止のため大規模な集会やデモができない隙を突くような動きだ。民主化運動の再燃を警戒して、この時期を狙ったのであれば、あまりにも卑劣なやり方だ。中国政府と香港政府は強権的統治に反対し続ける民意を尊重して「一国二制度」を順守しなければならない。

 周辺国と領有権で争う南シナ海でも一方的に行政区を設け、空母も派遣して軍事演習を強行した。2016年に国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所の判決で領有権の主張が退けられているにもかかわらずだ。

 日本の尖閣諸島周辺にも中国公船が活発に侵入している。

 中国は感染を封じ込めつつあるとはいえ、国内には感染第2波の懸念や景気低迷への不満が渦巻く。そうした国民の視線をそらす狙いもうかがえる。

 だが、法の支配を軽んじた覇権主義は国際社会の不信を買うばかりだ。コロナ危機を利用して自国の権益を拡大するなど許されない。そのことを中国は肝に銘じるべきである。

 今回の全人代は、感染症対策とともに、コロナ禍で大打撃を受けた世界第2の経済大国がどのような回復のシナリオを描くのかも焦点だ。今の中国には08年のリーマン・ショック後に巨額の景気刺激策を実現し、世界経済の「救世主」ともてはやされた当時の余裕はない。

 国際社会から信頼を得られる姿勢を打ち出し、転換点となる全人代にすべきだ。

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