こどもの日 「学ぶ権利」を守るために

 これほど重苦しく、不安な空気の中で迎える「こどもの日」は初めてではないだろうか。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止の特別措置法に基づく緊急事態宣言が延長されたことを受け、休校が長期化している学校をいつ再開できるのか、戸惑う自治体は少なくないだろう。

 新たな感染者の確認が続く地域では既に、長期の休校延期を決めた自治体もある。いったん再開しても、感染が増えるようなら再び休校せざるを得ない。

 事態収束にはまだまだ時間を要するという前提で、国と自治体、教育現場は子どもたちの「学ぶ権利」を守るために知恵を絞り、工夫する必要がある。

 萩生田光一文部科学相も地域の状況に応じた学校の再開を促している。新たな文科省通知では、時間帯や日によって登校対象の学年やクラスを分ける分散登校を検討し、特に小学校の生活になじんでいない1年、卒業を控えた6年、中学3年の登校を優先するよう求めている。

 前例のない長期休校で深刻な学習の遅れも懸念される。各地の学校はプリント配布などで自宅学習を支援しているが、学校での対面指導でないと行き届かない面があるのも間違いない。さまざまな個性を持つ級友と一緒に学びながら、子どもは成長し、社会性を育んでいく。

 ただ現状では、校内で集団感染が発生する可能性は否定できない。学校再開や登校日の設定を検討している自治体は、地域の状況を精査し、校内の感染予防策を徹底するとともに、そうした情報を保護者などに丁寧に説明することが欠かせない。

 各地でネット動画による指導やオンライン授業の取り組みが始まっているが、必要なパソコンやタブレット端末の所有、通信環境は家庭により異なる。文科省調査では、同時双方向型のオンライン指導を実施する自治体はわずか5%にとどまる。

 今後も災害などで対面指導が困難な場合、オンラインの活用が有効な代替手段となることは確実だ。国は情報通信技術(ICT)を活用した学習指導環境の整備に本腰を入れるべきだ。

 コロナ禍の先行きの不透明感が増す中、政府内に9月入学・始業案が浮上している。入試を控えた生徒の不安を解消し、留学などに便利であるとの利点は分かる。だが就職など社会全体のスケジュールに関わる変革であり、拙速な議論は禁物だ。

 後の世に、感染拡大に伴い学力が落ちた「新型コロナ世代」と呼ばせてはならない。地域の感染状況により著しい学力格差が生じることも看過できない。そのために大人が何をできるのか。その覚悟をいま一度確認する「こどもの日」としたい。

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