出勤時、トイレ後、化粧・喫煙前…産業医が助言する「職場とコロナ」

西日本新聞 くらし面 河野 賢治

 約30年の産業医のキャリアを持つ亀田高志医師(56)がまとめた書籍「『図解』新型コロナウイルス 職場の対策マニュアル」(エクスナレッジ社)が出版された。ウイルスの基礎知識、働く人の備え、職場で感染が疑われる人が出た時の対応など、50の質問に答える形で、新型コロナから労働者と職場を守る方法を説明。在宅勤務が推奨されても職場に出向かざるを得ない人がいる中、本を通してあらためて、勤務先での注意点を確認したい。

 亀田医師は産業医科大(北九州市)出身。日米の企業で産業医を11年間務めた後、職場の健康管理を支援する同大設立のベンチャー企業で社長に就いた。現在は福岡を拠点に、国内外で健康・危機管理のコンサルティングを手掛ける。

 書籍はまず感染経路について説明。他人がせきやくしゃみをした際、しぶきを吸い込む「飛沫(ひまつ)感染」と、机などに付着したウイルスを手で触り、その手で口や鼻に触れて取り込む「接触感染」の二つを挙げた。

 流行のピークに関しては、2009年に流行した新型インフルエンザを例に「通常は1回で終息せず、2回目、3回目の波がやってくる」。人から人へ、町から町へと広がることを考える必要があるという。

働く人の心得

 労働者の備えでは、外出を控える▽トイレの消毒▽手洗い▽マスクの着用-を呼び掛けた。ただ、「ほとんどの人の手洗いは、感染予防という意味では不適切で、不十分」と指摘。手は全体を丁寧に洗うか、アルコール消毒を求めている。飲食前や帰宅後▽職場に入る前▽トイレの後▽化粧や喫煙の前-の手洗いはとくに大切という。

 マスクは他人にうつさない効果が一定程度あるが、感染を完全に防ぐことはできないため、電車やバスは混む時間帯を避け、他人との距離を保つ。人と向き合わないことも挙げた。

 国内では感染して体調を崩した人や、ウイルスを取り込んでも症状のない人が他人にうつし、クラスター(感染者集団)が発生している。マイナスの連鎖をなくす対策は欠かせない。

 この点から、発熱してせきが出る時は自宅待機し、職場に連絡するよう呼び掛けた。同居家族に発熱やせきの症状があれば、換気を心掛け、過ごす部屋や食器を別にする。

 職場のトイレは他人の便や尿にウイルスが潜む恐れがあり、トイレ中は目や鼻、口を触らず、使用後は必ず手を洗う。亀田医師は「症状がある場合は出社せず、待機」という新型コロナへの基本的な向き合い方をやはり強調している。

管理職の備え

 職場の対策は、主に経営層や管理職が注意すべき点をまとめた。従業員の間で流行すれば、事業運営に大きな影響が出るためだ。

 まずは消毒。アルコール系か塩素系の消毒剤でドアノブやトイレの便座、机などを拭く。共用部分の消毒は職場の担当者や出入りの業者が、従業員の机の周りは個々人が担うよう呼び掛けた。また、職場に入る人は着用していたマスクを入り口で捨てる▽体調が悪い人は申し出る▽手や指の消毒-を徹底。社員と来客の動線を分ける工夫も求める。

 従業員が感染に直面した場合は、本人の自己責任にしない意識が大切。社員が「発熱した」と連絡してきた時に備え、産業医などと手順をマニュアルで作っておく。職場で発熱を訴えた場合は、産業医と連携して本人をケアし、帰宅に協力。本人が使った机やいす、電話は消毒する。感染が判明したら、上司と同僚は翌日から2週間をめどに自宅待機とする。

 従業員が感染して入院したら、職場が本人と家族に人事や労務面で支え、産業医は主治医と情報交換して経過観察する。復帰は主治医と産業医、本人が相談し、期日を決めるという。

 亀田医師は「終息まで約2年かかるという専門機関の見解もある。長期戦を想定し、職場の対策の方針を関係者で共有することが大切」とコメントしている。

 A5判。1400円(税別)。 (編集委員・河野賢治)

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