石巻漁業復興、ワカメ養殖から 食卓へつなぐ支援者代表の女性が寄稿

 2011年の東日本大震災から9年。甚大な被害に遭った東北の被災地は、復興への道のりをどう歩んでいるのか。震災直後から、ワカメや昆布の養殖漁業が盛んな宮城県石巻市北上町の十三浜(じゅうさんはま)地区に通い、今年4月、「浜とまちをつなぐ十三浜わかめクラブ」(仙台市)の代表になった、ライター小山厚子さんに、現地の状況について寄稿してもらった。

 「漁師の仕事は自然相手だから、人間の思い通りにはいかない。いい時もあれば悪い時もある。不作だった昨年に比べれば、今年のワカメの収量はまずまずだ。こないだのしけでなんぼかやられたから、万々歳とはいかないけど、まあ万歳ってとこかな」

 ワカメの刈り取りと、湯通し・塩蔵作業が終盤を迎えた4月下旬、宮城県漁協十三浜支所運営委員長の佐藤栄記さんは、安堵(あんど)の声だった。

 東日本大震災で、高さ16メートル以上の大津波に襲われた三陸リアス海岸沿いの十三浜地区。点在する13の小さな集落のほとんどで家も漁船も漁業施設も失われ、壊滅に近い状態となった。

 あれから9年余。集団避難生活から仮設住宅での長く不自由な生活を経て、一昨年、集落ごとの高台への集団移転が完了した。住民は苦労して再建した家や復興公営住宅へ。この新型コロナウイルス禍で、お祝いムードも吹き飛んでしまったが、仮設住宅の跡地に計画された小学校やこども園、役場庁舎、郵便局も今年3月に完成するなど、ようやく日常を取り戻しつつあるように見える。

 とはいえ、住民は4割も減った。元々、人口減少と高齢化が進んでいたところへ、犠牲になった人、さまざまな事情で都市部へ移り住まざるを得なくなった人…。転入者はまずおらず、残った人も一様に9歳、年齢を重ねた。「元気なうちはいいんだが」。口をつくのは、やはり先々の心配である。

 もう一つの懸念は海の異変。ここ数年、海水温が上昇気味で、サケの回帰が減り、養殖ホタテも思うように育たない。天然の海藻が豊かに生えていた「藻場」がやせ細る「磯焼け」現象も発生し、それを餌にするアワビがとれない。

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 こう書くと課題や悩みばかりだが、海とともに生きて来た浜の人たちは、うなだれているわけではない。さまざまな不安を抱えつつも毎日早朝から海に向かう。

 「ジタバタしても仕方ない。人間の思うようにはいかないのが自然。俺たちはその海から恵みをもらっている」という腹のくくり方。それは、震災から半年もたたない時期に聞いた、ある漁師さんのつぶやきとも共通する。「きれいだべ。やっぱり海はいいな」。津波で痛めつけられても、海を憎む人はいない。

 決して一人ではない。ライバルではあるけれども、行方不明の住民の捜索、海底に沈んだがれきの片付けなど、何かあれば助け合う仲間がいることも、おそらく漁師さんの活力の源だ。

 震災直後、「漁業の復興はワカメの養殖から」と、陣頭指揮をとったのは、当時の運営委員長、佐藤清吾さんだ。仕込みから出荷まで3年かかるホタテやホヤと違い、ワカメは収穫まで半年。復興の足がかりにしたいと11年秋にはもう、養殖作業を再開し、翌春には刈り取りしていた。

 「一人だけ抜け駆けしてはダメだ。ここで生きていく漁師みんなが復興しないと。漁協はそのためにある」。清吾さんの迅速な判断と行動の裏には、揺るぎない信念があった。

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 集落の絆も自治意識も、食の自給力も高い十三浜。立春の頃、一日がかりで集落内の全戸を回る、厄払いの伝統行事である獅子舞「春祈祷(きとう)」は震災後も、若手たちの手で1回も休むことなく続けられている。

 食物の宝庫である海は目の前だし、どの家も自給用の小さな畑を持ち、漬物や塩ウニなど保存食を作る。ここには、人間が生きるために不可欠な、人との協力と食がある。「かばね病(や)みしなければ(労を惜しまなければ)生きていける。いいところだよ」。何度も聞いた言葉だ。

 震災後、支援活動のために毎週のように十三浜に通いながら、海の仕事や浜の暮らしを教わってきた。

 私たちにできるのは、漁師さんが丹精込めて育てたワカメや昆布を、家庭の食卓に広め、漁業への理解を深めること。そう思い、月刊誌「婦人之友」などを通じ、海と食卓をつなぐ支援活動を13年から始めたが、漁師さんはじめ、生産者あっての私たちの食卓であることを、あらためて気づかされている。

十三浜産ワカメと昆布の新物、発送

 「浜とまちをつなぐ十三浜わかめクラブ」(仙台市)は、十三浜産の新物のワカメや昆布の購入による支援を呼び掛けている。

 同クラブは、東日本大震災被災地の支援活動から生まれたNPO。ジャーナリスト羽仁もと子・吉一夫妻が創業した出版社「婦人之友社」、読者組織「全国友の会」、同夫妻が創設した「自由学園」による取り組みを継承した。

 ワカメ(200グラム)茎ワカメ(同)各2袋、昆布(300グラム)1袋のセットで2500円(税・送料込み、同封の振込用紙で後払い)。売り上げの一部が十三浜の地域づくりに使われる。

 申し込みはファクス=022(797)8573、はがき=〒980-0811、仙台市青葉区一番町2の6の1、シティハウス一番町中央2F、メール=wakame13@hamatomachi.org=で同クラブへ。13日締め切り。発送は6月。

 同クラブ=022(797)8572(平日午前10時~午後4時)

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