「人件費だけで赤字」需要消えても…中洲の生花店、深夜営業続ける理由

 新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が延長され、九州一の歓楽街、福岡市・中洲も閑散とした日々が続く。その中で深夜営業を続ける生花店がある。中洲の店で働くホステスの誕生日祝いなど贈答用が主力で、クラブやスナックが休業する今、注文はほぼない。需要が消えた中でも「夜に花を買いたい人が1人でもいるなら店を開けたい」と踏ん張り続ける。

 シャッターを下ろした路面店が目立つ深夜の「ロマン通り」。周囲の薄暗さにあらがうように、生花店「ABCフラワー中洲本店」の電灯がこうこうと光る。店頭には贈り物で定番のラン、花と一緒にバルーンや縫いぐるみを詰め合わせた「花かご」が並ぶ。

 中洲で25年続く同店は通常、午後2時から翌朝の午前5時ごろまで営業。キャバクラやホストクラブの開店や周年記念、ホステスやホストの誕生日などの「イベント」でお祝いに贈られる商品が主力だ。

 店を経営するABCフラワー(福岡市)の志岐貴之社長によると、中洲では本店以外に2店舗の生花店を運営する。新型コロナの影響で3月から売り上げは大幅に減少、4月からイベント注文が消えたため、本店以外の2店舗の休業を決断。ただ、本店だけは仕入れを通常の1割程度に抑え、午後~深夜営業を継続する。志岐社長は「人件費だけでも赤字だが、中洲の夜から花屋の灯を消したくなかった」。同意する従業員の声にも押されたという。

 1日の来店は数人。夜間営業を知るホステスや会社員が立ち寄り、家族や恋人へのプレゼントとして購入する。深夜に花を買った福岡県宇美町の男性(35)は「彼女の誕生日に花をあげたくなった。開いていてくれて良かった」と喜んだ。

 本店に20年以上勤務する女性(46)は「中洲の花屋は、いかに空気が読めるかが大事。花を届けるタイミング次第でサプライズプレゼントを台無しにする。時間や機を逸するとクラブのママたちに怒られたが、なじみになったらかわいがってくれた」と話す。「今は厳しい時代だけど、中洲に花で癒やされたいと思う人がいるから、社長が許す限り店に立ち続けたい」と話した。(井崎圭)

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