路上生活者への炊き出しなどを続けている民間団体を一人の男性が訪ねた…

西日本新聞 オピニオン面

 路上生活者への炊き出しなどを続けている民間団体を一人の男性が訪ねた。差し出された封筒には現金10万円。新型コロナの感染拡大に伴い、政府が国民全員への10万円支給を発表した直後だった

▼「困っている人のために」。だが、10万円はまだ届いていない。男性は「私は年金があり、当面は心配ない。それよりも、今すぐお金が必要な人がいるはずです」。北九州市のNPO法人「抱樸(ほうぼく)」の奥田知志理事長が話していた

▼別の日に届いたメールには「布マスクを活用していると聞き、(政府配布分が)届き次第、送ります。私には家も蓄えもありますので(国からの)10万円も支援したいと思います」と

▼コロナ禍は苦しい立場の人により重くのしかかる。在宅で仕事を、と言われるが、家がない人は、ますます仕事を得られない。雇い止めで社員寮を出されたり、ネットカフェの閉鎖で居場所を失ったりする人も。そもそも住所がない人に10万円やマスクは届かない

▼抱樸は生活困窮者を全国規模で継続的に支援するため、1億円を目標にネット上で募金を始めた。「人と人の物理的な距離は遠くに、心の距離はより近くに」と奥田さん

▼きょうは「世界赤十字デー」。創設者デュナンの誕生日にちなむ。「傷ついた兵士は兵士ではなく人間である。人間同士として、その尊い生命は救わねばならない」。デュナンの信念は、コロナとの戦時の今に通じる。

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