総合計画、絵本仕立てに 長崎・松浦市 市民が熱論、完成に1年半

西日本新聞 社会面 前田 隆夫

「行政との距離縮めたい」

 中心に描かれたのは、思案顔の男の子。タイトルは「まつうら『が』『でも』いいんじゃない」。絵本と見まがう表紙だが、冊子の中身は2020年度から10年間の自治体運営の指針となる総合計画。作ったのは人口2万2千人の長崎県松浦市。延べ数百人の市民が関わり「手に取って読める総合計画」を目指した。

 一般的な総合計画はコンサルタント会社や自治体職員が案を作り、有識者の審議会で決定する。松浦市もそうだったが、今回は型を破り、市民の対話でまちづくりの目標をまとめた。

 まず、住民基本台帳から無作為に抽出した90人と公募の40人で「未来会議」を4回開催。この10年のまちづくりで「良かったこと」「いまいちだったこと」、まちづくりに「私たちができること」を少人数のグループで話し合った。

 さらに地域別の未来会議を8回、子育てグループや企業、小学生などへのインタビューを41回重ね、市民を中心に構成した審議会で最終案をまとめた。

 第1回未来会議から完成まで1年半。なぜ、これほどの手間をかけたのか。

 初期に事務局を担った元市職員の川浪剛人さん(53)は問題意識を持っていた。人口が減り続け、市民との協力が一層大事になっているのに、行政は市民の声を聞いているだろうか-。「市民と行政の距離を縮めたかった」と川浪さん。

 堅い言葉で書かれ、市職員もあまり読まない「市役所の総合計画」を「市民の総合計画」に変える。長い作成過程は、市民が話し合ってまちづくりをする土壌を育むと考えた。

 市民も地域の未来像、課題について活発に意見を出した。審議会は予定した時間内に議論が収まらず、1泊の合宿をした。会長を務めた長崎県立大の石田聖講師(市民参加論)は「委員の発言があんなに多い審議会は初めて経験した。熱を感じた」と振り返る。

 未来会議と審議会に参加した松浦高3年の林太陽さん(17)は「市内の知らなかった地域の実情を知ることができた」。地元への愛着が深まった様子だ。

 絵本仕立てにすることに慎重論もあったが、行政施策や計画を体系的に示すイラストを付け、市議会の賛同も得た。

 A4判68ページ。市内の全9900世帯に配布し、小学校の授業で活用することも検討する。「作って終わりではない。市民に浸透させ、活用することが課題」と石田講師は指摘する。

(前田隆夫)

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