仮想現実(VR)技術が発展した近未来…

西日本新聞 オピニオン面

 仮想現実(VR)技術が発展した近未来。人の寿命さえコンピューターで予測される。平野啓一郎さんが本紙朝刊に連載中の小説「本心」の設定だ

▼主人公は29歳。ある時<47年297日15時間31分34秒>と表示された余命時間が、刻々と砂時計のように減っていく。人生が秒単位で葬られる焦燥感を平野さんは<僕の、僕自身からの、絶え間なく続く落剥(らくはく)>と表現した

▼それと似た焦燥を今、感じているのが、新型コロナウイルスの影響で学校に行けぬ子どもたちでは。特に高校、中学生に与えられた時間はわずか3年。なのに休校続きで日常的な学習どころか入試準備もおぼつかない。中ぶらりんの青春である

▼子どもたちのピンチをチャンスに変えようと、9月入学制の導入を多くの知事が唱え始めた。入学時期を世界標準の9月に変更すれば今の学習の遅れに対応でき、将来の留学もしやすくなる。突き上げられた形で安倍晋三首相も来年導入の検討入りを表明した

▼就職や会計年度を中心に4月を起点としてきた日本社会の大変革につながる。問題点や混乱は多かろう。ただ、子どもの学びは憲法に保障された権利である

▼俵万智さんの歌を引く。<青春という字を書いて横線の多いことのみなぜか気になる>。横線とは幾多の障害か。それを一本でも取り除くのが今の大人たちの仕事では。未来ある少年少女に落剥だらけの青春を送らせてはいけない。

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