コロナ便乗犯罪 市民も注意し弱者を守れ

西日本新聞 オピニオン面

 世の中に広がる不安や恐怖につけ込む。親切や援助を装って弱者を欺く。そうした卑劣な犯罪を許してはならない。警察の取り締まりに加え、市民の側も注意を心掛け、撃退したい。

 新型コロナウイルス感染の拡大に便乗した詐欺の被害やトラブルが多発し、全国の警察や消費生活センターが注意を呼び掛けている。特に目立つのは政府や自治体の経済対策を装って高齢者らをだます手口だ。

 役所の職員などを名乗る電話で、架空の助成金や還付金の話をしてキャッシュカードを用意させる。感染予防を名目に、手続きは「こちらで代行する」「銀行の現金自動預払機(ATM)で行う」などと告げ、自宅からカードを持ち去ったり、ATMでの操作を指示したりする。

 こうした「なりすまし」で、現金を引き出されたり振り込まされたりする被害が首都圏や関西などで続発している。大阪では高齢者が息子に扮(ふん)した男から金を無心され、銀行から下ろした800万円を詐取された。男は銀行から怪しまれないよう窓口では「コロナで資金が必要になった」と話すように被害者を誘導していたという。

 警察庁のまとめでは、新型コロナに関係した詐欺は4月27日までに未遂を含め全国で少なくとも32件発生、被害額は約3100万円に達する。このほか各地の消費生活センターには、マスクや消毒液の販売、ウイルス除去の消毒作業などを装う詐欺や悪質商法とみられる相談が多数寄せられている。実際の被害は広範に及ぶとみられる。

 今月から、全国の自治体を通じて国民への一律10万円の給付手続きが始まった。これに狙いを付けた犯罪が増え、被害も広がる恐れがある。自治体にはスピードが求められる給付作業だが、手続きの正確な周知や注意喚起に努めるべきだ。警察も取り締まりを徹底してほしい。

 一方、子どもたちにも注意が必要だ。東京では、外で遊んでいた児童が男から「ウイルス検査をする」と言われて体を触られたり、「コロナに効くアメをあげる」と声を掛けられたりする事案も起きている。

 今の日本社会は、外出の自粛に伴い、地域の住民同士が声を掛け合い、不審者に目を光らせるといった防犯機能が弱まっている。人との密接な交わりは当面避けつつも、家族や知人らには電話やメールで小まめに連絡を取り、近所の子どもの様子にも注意を払うなど、私たち一人一人の心掛けも必要だ。

 コロナ禍によって不幸の連鎖が生じ、弱者がさらに痛みを被るようなことがあってはならない。行政と市民社会の連携で、便乗犯罪の根を断ち切りたい。

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