西鉄ホテルが意地の開業 初進出のタイ、非常事態で延期続々

 【バンコク川合秀紀】新型コロナウイルスの影響で、世界各地でホテルの休廃業や開業延期が相次ぐ。逆境下、西日本鉄道(福岡市)がタイの首都バンコクで建設を進めてきた「ソラリア西鉄ホテルバンコク」は30日、予定通り開業に踏み切る。業界内外で「無謀だ」との声が漏れる中、河原政志総支配人(45)がこだわったのはブランドの矜持(きょうじ)だった。

 西鉄の海外ホテルは韓国(ソウル、釜山)に続く計画で、2015年に概要を公表。進出手続きなどを経た昨年12月18日、開業日の発表にこぎ着けた。間もなく、中国での新型ウイルス感染拡大が報じられ世界に広がっていった。

 タイでは3月半ばから感染者が急増。同26日に非常事態宣言も出て外国人の入国が厳しく制限され、宿泊需要が急減。日系を含むホテルは軒並み休業に追い込まれ、新規ホテルの開業延期発表も相次いだ。

 「ここまで来て、これか」。バンコク着任約2年、準備に奔走してきた河原さんも一時は開業延期に傾いた。だが会社初の東南アジア進出。しかもタイの日系ホテルでは例のない、所有・開発から運営まで全て自社で手がける。タイでは無名ながら注目されていただけに「他社と横並びの延期でいいのか」と感じるようになった。

 非常事態宣言は5月末までに延長されたものの、解除されれば入国制限の緩和や国際線の一部再開もあり得る。「タイに来て一時隔離が必要になるかもしれない日本人を、開業できるはずのうちが受け入れられないのは悔しい」。4月以降、そんな思いを福岡の本社と開業許可を出すタイ当局に訴え続けた。「本気なんだな」。相手からは偶然、同じ言葉が返ってきた。ともに予定通りの開業にゴーサインを出してくれた。

 27階建て全263室。消毒や検温のほか、1日3食の提供や業務用洗濯スペースの開放といった追加準備を整えた。あくまで可能性にすぎない。河原さん自身、当面はほぼ稼働ゼロを覚悟している。

 約5年前、志願して海外の最高級ホテルで1年間研修した。ホテルと利用客の深い信頼関係がブランド価値を生んでいると実感した。「地方企業の『無謀な開業』と笑われるが、将来の国際的なブランドを目指すために、今こそ私たちがホテルの明かりをともす」。タイ人の従業員約150人に近く、こう説明するつもりだ。

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