子どもの自然体験創出 送迎や検温、密集避け…試行錯誤する現場

西日本新聞 社会面 四宮 淳平

 新型コロナウイルスの感染拡大により自宅で過ごす時間が増える中、子どもたちの自然体験活動の欠乏が不安視されている。自然体験は学びの土台にもなるとされ、専門家はさまざまな場面でのひらめきにもつながると提起する。体験が多いほど、自らの価値を積極的に評価できる「自己肯定感」が育まれるとの調査も。関係者は外出自粛など限られた条件の下、体験の機会を創出。子どもたちに刺激を提供しようと、試行錯誤している。

 4月末、福岡県篠栗町の山中で子どもたちが小川を上り下りしていた。同町のフリースクール「山ねこ」に通うのは、不登校の小学生4人。暖かな一日で水も風も気持ちいい。乗り気ではなかった男の子も友達に誘われ、少しずつ歩を進めた。一帯は民家もまばら。草が茂る休耕田を楽しげに走り回った。

 「子どもたちはストレスがたまると、荒い言動が出てくる。でも自然の中で過ごすと、協力し合う状況が生まれ、心も和らぐ」。運営する一般社団法人の田中歩代表理事(41)は、自然体験活動の意義をこう説明する。校舎には、ログハウスのような内装の民家を活用している。

 国が一斉休校を要請した2月末、保護者や子どもと話し合った。車での送迎や毎日の検温、日常生活で人混みを避けることを確認し、活動の継続を決めた。仕事を休めない家庭があることや、自宅にこもった場合の子どもの心の負担を考えての判断だった。

 純真学園大の平嶋一臣客員教授(感性学)は「自然の中での遊びが多いと五感が刺激されて感性が鋭くなり、さまざまなひらめきにつながる。他人との考え方の違いに気付く力は優しさを育て、表現も豊かにする」と指摘する。独立行政法人「国立青少年教育振興機構」の2014年度調査では、自然体験が豊富な子どもほど自己肯定感が高いという傾向が出ている。

 鹿児島市で子どもの自然体験を支援する「森のようちえん」の市川雪絵さん(48)は「外出を控える中でも、自宅の庭の端に根付く草を観察したり、ベランダで太陽光を虫眼鏡で集めたりする活動から、子どもの感性をくすぐることができる」と提起する。

 森のようちえんは、未就学児を中心に小中学生も受け入れる。休校期間は、登録する約50人の保護者と連携。密集を避けるプログラムを組み、希望する子どもが通い続けている。コロナ禍の中、ストレスが原因とみられる腹痛やチック症状がみられた子も、森に数日通うと症状が改善していくという。

 雨でも森の中で遊び、自然の厳しさを感じる。雨水やぬかるんだ斜面も遊び道具の一つだ。小さな体験の積み重ねは、子どもの成長につながっている。市川さんが大切にしているのは、共感する姿勢。「素朴な疑問に、答えを提示する必要はない。同じ目線で、不思議だね、面白いねと声を掛ければ、子どもたちは体を使って学んでいく」 (四宮淳平)

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ