佐賀県産スピリッツでコロナ撃退 地元蒸留所から「今できること」

 赤れんがをあしらったレトロな外観に、蒸留所の名前にもなった大きなクスノキが目を引く。佐賀県内で初めての県産スピリッツを造るため、4月1日に製造免許を受けたばかりの「楠乃花蒸溜(じょうりゅう)所」(佐賀市諸富町)。和田真司さん(59)は、その運営会社「スティルダム・サガ」の代表として酒造りに力を注ぐ。

 熊本県出身で佐賀大卒業後に県内の酒造会社に就職。焼酎造りや営業に取り組む中で世界の蒸留酒への興味を高めた。中でも幕末の佐賀藩との交流があったオランダが発祥とされるジンに強く心をひかれた。「自分を育ててくれた佐賀で、県産材料を使ったジンを造りたい」。35年ほど勤めた会社を退職し、昨年5月に同社を設立した。

 ジンはジュニパーベリーやコリアンダーシードなどの植物素材を加えて造られる。「武雄のレモングラスに唐津のハーブ類…佐賀には豊富な素材がある。鍋島小紋の柄でもある県産のゴマを使うのはどうだろう」。構想が膨らんだ。

 しかし蒸溜所オープンと同時期、県内でも新型コロナウイルスの感染が拡大。酒の需要は落ち込み、バーの休業も相次いだ。「今造ったとしても売れない」。悩む中で全国的に消毒液が不足する状況も知った。「蒸留技術を役立てて少しでも補えれば」と急きょ取り組んだのがアルコール濃度が高く消毒用に使える「楠乃花フレーバード・スピリッツ75」の製造だった。

 原料は県産にこだわり、鹿島産有機レモンと小城市の酒造会社が手がけた純米焼酎の原酒を使う。ソフトな甘みとほのかなレモンの香りが特徴といい、カクテルなどで楽しめる。

 本来は飲用の酒を消毒用に使うことに「葛藤はあるが、今できることはこれしかない。収束後には飲んで楽しんでほしい」。375ミリリットルで通常3千円程度だが、困っている人に少しでも行き渡るようにと、製造コスト分のみの1700円(税別)で提供。県内のスーパーなどで購入できる。

 循環を繰り返すことでアルコール濃度を高めるオランダ製の蒸留器には、佐賀藩の軍艦にちなんで「電溜(でんりゅう)丸」と名付けるなど佐賀愛にあふれている。蒸溜所は佐賀藩が国内初の実用蒸気船「凌風丸」を造った三重津海軍所跡に近い。「これも何かの縁かも。佐賀でオランダの酒を造ることは歴史的なストーリーとも合致するんです」

 コロナ収束後には佐賀の材料を使ったジンやウォッカ、ウイスキーの製造を計画している。「今まで思いためてきたアイデアを生かして酒を造り、将来は佐賀をスピリッツもおいしい土地にしたい」と意気込んでいる。 

(穴井友梨)

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