見逃しリスクも…オンライン診療、もろ刃の急拡大 アプリ申し込み8倍

西日本新聞 一面 山下 真

 新型コロナウイルスへの感染を避けるため、スマートフォンやテレビ電話を使って診察するオンライン診療が注目を集めている。厚生労働省が4月に規制緩和を拡大し、終息までは初診からオンライン診療などを認めたのを機に利用が急増。基礎疾患があるなど重症化の恐れがある人のニーズも高まっている。ただ、画面越しの診察は情報量が限られ、疾病を見落とすリスクも潜む。専門家からは慎重な運用を求める声が上がっている。

 「患者の顔を見ながら診察するのは対面でもパソコン画面でも同じですよ」。福岡市東区の診療所「たろうクリニック」で、内田直樹院長はオンライン診療についてこう説明した。

 予約時間になると、患者のスマートフォンなどに登録した専用アプリに通知が届く。医師は画面越しに体調や薬の服用状況を尋ね、表情や声色もうかがう。足のむくみなど特定の部位に異常があれば拡大して映してもらう。

 「万が一、医師が感染すれば診療全体がストップする。これなら、物理的に距離を取って診察できるので安心です」と内田院長。

 クリニックは2017年8月にオンライン診療を導入し、2年半の利用実績は7人だった。ところが、規制緩和が拡大された4月10日以降、認知症の高齢患者を中心に新たに19人が利用したという。

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 オンライン診療は従来、離島や過疎地、病状の安定した慢性疾患の患者に限定的に用いられてきた。厳しい利用制限や診療報酬の低さを背景に普及が進まず、オンライン診療ができる施設基準を満たす九州の医療機関の割合は1~2%だった。

 厚労省は感染拡大を受けて、2月から段階的にオンライン診療の運用ルールを緩和。施設基準外の医療機関も対応できるようになった。

 オンライン診療の専用アプリを手掛ける「インティグリティ・ヘルスケア」(東京)には、医療機関から問い合わせが急増している。4月のアプリの利用申込件数は従来の8倍近いという。担当者は「新型コロナウイルスの影響で爆発的に広がっている」と話す。

 感染すれば、重症化リスクの高い人も期待を寄せる。心不全や呼吸器疾患を患う母を介護する女性(54)は「感染すれば命に関わる。病院に行かなくても薬の処方を受けられるよう、オンライン診療が定着してほしい」。

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 もっとも、オンライン診療には注意点もある。

 「聴診や触診をしなければ、診断できない病気もある」。日本遠隔医療学会の会長で鳥取大の近藤博史教授はこう指摘する。

 医師は直接問診しながら患者の動作や呼吸をつぶさに観察する。画面越しの情報には限界があるため、疾病の見落としが懸念され、容体が急変しやすい病気への対応の難しさもあるという。

 近藤教授は「新型コロナウイルス感染症は急に呼吸不全に陥る危険もある。必要に応じて、オンラインと対面診療を組み合わせることが欠かせない」と話す。

 たろうクリニックではオンライン診療時、患者の元に看護師を派遣している。顔色や息遣い、体温などの所見を医師に伝え、スマートフォンの操作を患者に助言する。内田院長は「オンライン診療はあくまで選択肢の一つ。さまざまな方法で補完し、丁寧に診察したい」としている。 (山下真)

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