「英国王のスピーチ」が伝えること 菊池良和(九州大病院・吃音外来医師)

西日本新聞 医療面

連載:吃音~きつおん~リアル(21)

 第83回アカデミー賞(2011年)の作品賞などに輝いた映画「英国王のスピーチ」を覚えている人も多いでしょう。主人公ジョージ6世は国王となるも、吃音(きつおん)のため演説に不安があり、言語療法士ローグに相談します。ローグは吃音の不思議なメカニズムを体感させることで信頼を得ていきます。そして、ヒトラー率いるドイツとの開戦時、ジョージ6世に重要なラジオ演説の機会が訪れるというストーリーです。

 父である国王から流ちょうに話せないことをきつく叱られる場面、大勢の視線を浴びてスピーチする恐怖…。私から見ても、当事者の悩みをとてもうまく表現しています。感動のあまり、何回も映画館に足を運びました。

 映画に描かれている1930年代当時の誤解、当事者のプレッシャーの深刻さに胸が痛みました。この10年ほどで研究が進み、親の育て方が原因でないことは明らかになっています。

 重い足取りで吃音外来に来た小学5年の男の子に、この映画を紹介しました。「つっかえる話し方、僕だけ。嫌なんだ」とうつむいていた男の子は「王様でも吃音があるんだ」とびっくりして私を見上げました。緊張した表情は少しだけ和らいでいました。

 ゴルフのタイガー・ウッズ選手(米国)、サッカーのハメス・ロドリゲス選手(コロンビア)、米国のバイデン前副大統領らも吃音があったことが知られています。国内でもフリーアナウンサー小倉智昭さんが、自らの吃音について講演してくれたことがあります。

 人との違いに悩んでいる人は「自分だけが…」と思い込んでいることが多いです。「1人じゃない」と気付いてもらうためにも、社会の偏見を解消するためにも、映画「英国王のスピーチ」や各界で活躍する当事者の存在を知ってほしいと思っています。 (九州大病院医師)

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