自立とは「誰か助けて」と言える力【坊さんのナムい話・11】

西日本新聞 くらし面

 春は出会いの季節です。新しい環境、新しい仲間、新しいご縁。希望に満ちあふれています。

 しかし今年は違います。新型コロナウイルスへの対応で、これまでにない緊張を強いられています。通常の顔合わせや歓迎会は行われず、働き方や学び方も変わりました。「もっと大変な状況の人もいる」「これぐらいで弱音を吐いてはいけない」と自分を追い込んではいないでしょうか。

 知人に心理カウンセラーをしているお坊さんがいます。その方に「自立」について教えてもらったことがあります。「何でも自分一人でできることを自立だと思っている人がいますが、それは自立ではなく孤立です。困ったときに『誰か助けて』と言えることが本当の自立というのです」

 確かに私たちは小さい頃から「何でも自分でできるようになりなさい」と教えられてきました。それが自立への第一歩と信じてきました。しかし、一人でできることは限られ、力にも限界があります。

 弱いことは恥ずかしいことではありません。人はみんな弱いのです。弱さを認め、お互いに助け合えるのが人の強みであり、それができることが本当の自立ではないでしょうか。

 先日見たテレビ番組で、緊張を緩める方法を紹介していました。手を温めるといいそうです。詳しい仕組みは分かりませんが、緊張がほぐれるとのことでした。私は人前で話す前は、膝の上で手を温めるようにしています。

 人は困ったときや寂しいときは、手を取り合って乗り越えてきました。誰かに手を握ってもらうと、そのぬくもりが私の手を温め、さらに体を伝わり私の心も温めてくれるのです。助け合いは、お互いを安心させることにつながります。

 といっても、いつでも誰かが手を握って温めてくれるわけではありません。寂しいからといって、街中で誰かに「手を握って」と頼むのは気が引けます。特に今、接触は自粛ムードです。そんなときは、自分の左右の手を胸の前で合わせるのです。右手が左手を、左手が右手を温めてくれます。それが合掌の姿勢です。 (永明寺住職・松崎智海 北九州市)

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