分権ののろし上げよう 前田隆夫

西日本新聞 オピニオン面 前田 隆夫

 緊急事態の期限が5月末まで延長され、アフターコロナの議論が活発だ。新型コロナウイルス感染症を乗り越えた後の社会の変化をさまざまな人が予測している。

 例えば働き方。もう実感している人が多いだろう。テレワーク、ウェブ会議は当たり前になりつつある。こうした変化の流れに「国と地方の関係」を乗せたい。

 コロナ問題で光が当たらなかったが、この4月は地方分権一括法の施行から20年の節目だった。国の下請け仕事の象徴だった機関委任事務が廃止され、国と自治体の関係は「上下・主従」から「対等・協力」に変わった。支店長だった知事や市町村長は社長になった、と例えられた。

 地方のことは地方で考え、地方で決める。地方分権は、権限と財源を握る国にぺこぺこするばかりの地方行政、政治を変える意義もあった。

 画期的改革だったが、20年たつと遠い昔の出来事。ある市のベテラン職員に聞くと、若い職員にとって地方分権はもはや歴史であり、業務上で実感することもないそうだ。

 無理もない。一括法施行の後、地方分権は道半ばでトーンダウンした。権限を手放したくない国はもちろん、地方も三位一体改革による財政悪化、平成の大合併の荒波が続き、意欲をなくした。自戒の念を込めて言えば、新聞社の熱も冷めた。

 今や中央集権的な「国が細かいことまで決めて自治体にさせる仕事」が目につく。地方創生の計画もそうで、上下関係が復活したかのようだ。

 この停滞を破る兆しが、自治体のコロナ対策に見える。

 福岡市は国に先んじて、休業要請に応じた事業所の賃料補助を打ち出した。川下りの船頭さんに応援金を出す福岡県柳川市も個性が光るし、一人親家庭への給付が手厚い自治体もあった。支援策や医療態勢は全国一律で進める国よりも、自治体の方が地域事情に沿った工夫、柔軟性、スピードを発揮している。

 財源が足りない自治体は国に交付金の増額を求めているが、思い切って税財源の構造を変える大きな議論を起こしたい。地域政策を充実させるために、自治体が自由に使える財源を増やす。これこそが、未完の分権改革である。

 アフターコロナの社会の仕組みは、きっと「密より疎」「集中から分散」に向かう。1980~90年代は福岡市の桑原敬一市長、大分県の平松守彦知事、熊本県の細川護熙(もりひろ)知事をはじめ、九州のリーダーたちが「国から地方へ」の論陣を張った。

 再び、のろしを上げる時ではないか。 (佐世保支局長)

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