米国の雇用悪化 対岸の火事では済まない

西日本新聞 オピニオン面

 これは「対岸の火事」では済まないと覚悟すべきだろう。新型コロナウイルスのまん延に伴い、急激に悪化している米国の雇用情勢のことだ。

 雇用の危機は米国にとどまらない。欧州をはじめ世界に広がる様相を呈している。日本でも雇用不安が高まってきた。政府や経済界は歴史的な事態にあるとの認識を共有し、雇用を守るため万策を講じるべきだ。

 米労働省が8日発表した4月の雇用統計は過去最悪で、衝撃的な数字だった。景気動向を反映する非農業部門の就業者が前月より2050万人減り、失業率は14・7%と前月の4・4%から跳ね上がった。

 感染が急拡大した3月以降、外出制限による店舗休業や工場の操業停止などが相次ぎ、失業者が急増した結果だ。

 米国の就業者数の減少は、第2次世界大戦が終わり米軍の動員が終わった1945年9月(195万人)がこれまでの最大だった。今回はその10倍を超えている。9年かけて積み上げてきた雇用の増加を3月と4月で一気に失った計算だ。

 新型コロナ対策を戦争に例える政治家もいるが、雇用に限れば、その負のインパクトはまさに戦争に匹敵するだろう。

 失業率も、リーマン・ショック後の10・0%や戦後最悪だった第2次石油危機時の10・8%を上回っている。実勢の失業率は20%を超えているとの見方もあり、5月以降さらに悪化する懸念も出ている。米国は一時的解雇が多く、景気が回復すれば仕事に復帰できる人が多いとされるが、楽観はできまい。

 米国に比べ日本の雇用情勢はまだ落ち着いている。3月の失業率や有効求人倍率は前月より悪化したものの、その幅はわずかだった。ただ4月に政府が緊急事態宣言を出し、延長もされた。雇用環境は一段と悪化しており、今月末発表される4月分の数字はより厳しくなろう。

 倒産や廃業が増えれば、失業率はいずれ過去最悪の6%台に上昇するとの予測もある。

 経済活動の自粛が長期化し、日本を代表する鉄鋼や自動車のメーカー、航空会社などで一時帰休が広がる。雇用を守る取り組みと言えるだろう。

 政府は、緊急経済対策にある個人や企業への支援策を速やかに実行し、足らざるを補う次の対策作りも急ぐべきだ。いったん廃業、失業すると再起が難しい現実がある。特に中小企業の雇用に目配りをしてほしい。

 忘れてならないのは新卒の扱いだ。企業には来春の採用計画を見直す動きが出始めた。多くの若者を苦しめ、現在の社会にひずみを残した「就職氷河期」を繰り返してはならない。

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