「死にたい」いのちの電話、眠らぬダイヤル コロナで相談急増

西日本新聞 くらし面 長谷川 彰

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が長く続いた中、自殺防止を目指して電話相談に応じるボランティア組織「いのちの電話」に、不安や悩みの声を寄せる人が急増している。社会福祉法人「福岡いのちの電話」(福岡市)では、4月の関連の相談件数が前月の4倍に跳ね上がった。相談員たちは、自身の感染予防に努めながら24時間体制で傾聴を続けている。

 「なんでも自粛、自粛でもう死にたいくらい。でも死ぬにも死ねない」-。深夜に電話を掛けてきた熟年世代と思われる女性は、どうしようもない胸の内を切々と語り続けたという。

 福岡いのちの電話事務局によると、4月の相談電話843件のうち、97件がウイルスに関する通話だった。

 福岡市で初めて感染が確認された2月20日を境に、声が届きだした。2月は7件。3月は25件だったので4月は一気に増えた形だ。

 電話相談を寄せる人は匿名でよいので、詳しい分析はできないが、やりとりの内容などから推測すると、年齢層は20代から70代以上まで幅広く、男女の極端な偏りはないという。「普段は少ない20、30代が目立つ」のが特徴だ。

 北九州いのちの電話(北九州市)でも、4月に入り急増。受けた1229件の2割強がウイルス関連の内容だった。福岡、北九州のいずれも、学校の一斉休校、緊急事態宣言に伴う休業の続出や、「3密」を避ける行動自粛要請などで、日々の暮らしを巡る不安、不満、悩みが増えてきた。

 「勤務先が休業になり、解雇された」「仕事が激減して途方に暮れている」「休業支援策の相談をしようにも電話がつながらない」など、経済面の苦境はもちろん、「外出自粛で閉じこもらざるを得ず、夫のDVが怖い」「妻がストレスのためか問題行動を起こすようになった」「県外に住む身内が感染したが、手助けに駆けつけることもできない」といった、家族にまつわる悩みを打ち明ける声も少なくない。

 「とにかく毎日、気がめいる」「誰とも話ができずつらい」と、孤独感や精神面の苦しさを訴える声は一貫しているという。

 いのちの電話は、悩みの声をしっかり受け止めることで、相手に心の落ち着きを取り戻してもらうのが基本的な狙い。具体的な解決策を授けるのが主目的ではないが、ウイルス問題については内容次第で、厚生労働省から案内された個別の専門相談窓口を紹介するなどしている。

 九州7県のいのちの電話8センターでは、相談員の中に、親が介護を受けるために通うデイサービスが使えなくなったり、休校中の孫を預かることになったりなどの理由で、業務に就けなくなった人が少なからずいるという。人繰りを工夫し、電話を受ける場所も個室にして相談員同士の接触を最小限にとどめるほか、室内や電話機の消毒を徹底するなど、24時間受け付け体制の維持に努めている。

 福岡の事務局は「相談員たちも内心に不安を抱えつつ、こんな時だからこそと『眠らぬダイヤル』への期待に応えてくれている」「私たちの電話もつながりにくい時があるかもしれないが、メールやSNSなどでは得られない、人と人の会話で社会的使命を果たしたい」と話している。 (特別編集委員・長谷川彰)

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