依存症自助グループ、「つながりの場」失い孤立の危機

西日本新聞 一面 山下 航 小林 稔子

 アルコールやギャンブルなどの依存症から回復を目指す人たちが、体験や悩みを打ち明け合う「つながりの場」が失われつつある。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ3密(密閉、密集、密接)対策で自助グループの活動中止が相次いでいるためで、関係者は当事者の孤立に危機感を募らせる。オンライン会合や自宅訪問など、「絆」を保つため苦心の取り組みが続く。

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 「今は心境を吐き出せる場所がない」。アルコール依存症者でつくる「城南断酒友の会」(福岡市)代表の小原龍雄さん(63)は悲痛な胸の内を明かした。

 自身も酒に溺れた過去を持つ。毎月2回あった公共施設での集いは、コロナ対策で中止に。メンバーとは電話や無料通信アプリLINE(ライン)で頻繁に連絡を取り合っているが、気掛かりなのは1人暮らしの仲間だ。「家にこもりきりにならないか不安。『外に出て』とも言えないし…」

 3月以降、福岡県内に27ある断酒会の活動は軒並みストップ。5月に県内の公共施設や病院で予定されていた約70回分の集いも、ほぼ中止となった。別の自助グループ「AA(アルコホーリクス・アノニマス)」も、九州・沖縄にある85グループのうち12日時点で7割が活動を休止している。

 断酒会のある参加者は、集いが開かれないことで「飲んでしまうかもしれない」との危機感を抱き、依存専門のデイケアに頻繁に通い始めた。窃盗症(クレプトマニア)の自助グループ「KA福岡」(福岡市)にも活動休止後、「欲求が抑えられない」と入院した人がいるという。

 国立病院機構肥前精神医療センター(佐賀県吉野ケ里町)依存症治療センター長の武藤岳夫医師(46)は「日々の習慣が崩れることで心が不安定になる人は少なくない」と話す。

 「絆」をどう維持するか-。NPO法人アスク(東京)は4月下旬から、当事者や家族同士がオンラインで集える場をホームページで紹介。今成知美代表は「当事者にとって孤立することが一番危険。オンラインなら全国の仲間とつながれる」と強調する。

 福岡市の依存症リハビリ施設「ジャパンマック福岡」でも、利用者の通所頻度を減らす代わりにスタッフが自宅訪問している。駐車場や公園に集まる自助グループも出てきた。

 ギャンブル依存症の自助グループ「GA福岡」(福岡市)の男性(46)は、12年前に仲間と語り合う場ができたことでギャンブルを遠ざけた生活を送れている。ただ「越境パチンコ」のニュースを見ると「依存症の真っ最中だったら自分も同じように行っていたはず」との思いが頭をよぎる。

 苦しんだ時に支えとなった場は今、コロナ対策で通えない。LINEの画面を見つめながら、以前のように対面で語り合える日を待ち望んでいる。 (山下航、小林稔子)

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