韓国 保革の対立に拍車 元慰安婦の象徴が支援団体を批判

西日本新聞 国際面 池田 郷 金田 達依

 【ソウル池田郷、釜山・金田達依】韓国の元従軍慰安婦、李容洙(イヨンス)さん(91)が支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」の活動や募金の使途を批判したことが波紋を広げている。背後には、4月の総選挙に革新系与党から出馬して初当選した尹美香(ユンミヒャン)前代表への不信感もちらつく。一方、総選挙で大敗した保守系勢力は、尹氏の批判を強めるなど文在寅(ムンジェイン)政権の支持勢力に揺さぶりをかけている。

 慰安婦問題を象徴する少女像が置かれたソウルの日本大使館前。日本政府に抗議するため正義連が毎週開いている「水曜集会」は13日、騒然とした空気に包まれた。李娜栄(イナヨン)代表は「個人的な資金横領や流用は決してない」と、尹氏や団体に絡む疑惑を否定。会場周辺では保守系団体の集会参加者の「正義連は解散を」との怒声が飛び交った。

 水曜集会は1992年、当時の宮沢喜一首相の訪韓に反対して始まった。自身も参加してきた李容洙さんは7日、大邱市で記者会見に臨み「(若者に)憎悪を教えている」と見直しを要求。参加者らからの寄付金が元慰安婦たちのために使われていないと非難した。

 李さんは2007年、米下院の聴聞会で自身の体験を証言し、17年には訪韓したトランプ米大統領の夕食会に出席するなど元慰安婦の象徴的な一人。韓国各メディアが発言を大きく扱っている。15年の日韓合意に基づき日本が拠出した1人1億ウォン(約870万円)について、尹氏が元慰安婦らに受け取らないよう迫ったと報じた保守系紙もある。

 李さんらには、慰安婦問題が未解決のまま国政に進出した尹氏への不満もにじむ。李さんの会見には、総選挙で与党からの出馬を目指し公認候補から漏れた男性も出席した。男性は否定しているが、李さんはこの男性からそそのかされていると見る向きもある。

 革新側の足並みの乱れは保守側にとって格好の攻撃材料だ。13日、釜山市の日本総領事館前であった正義連の支持団体の集会で女性参加者は「親日メディアが攻勢を始めている。尹氏が国会で慰安婦問題解決に取り組むのを妨害する意図からだ」との声を上げた。

 一連の騒動を受け李さんは同日、自身の立場を文書で表明。「既存メディアで提起されている根拠のない臆測と非難、派閥争いなどが私たちのために貢献することは何もない」と訴えた。事態収拾を図りたい革新陣営の思惑を反映したとの見方もある。

 今回の内紛劇は、韓国の対日姿勢に影響するのだろうか。李さんは文書の中で「加害国である日本の公式的な犯罪認定と謝罪」を求める立場も改めて強調している。こうしたことから、文政権の基本路線には大きな変化はなさそうだ。

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