ラジオ長寿番組の一つにNHK第1の「音楽の泉」がある…

 ラジオ長寿番組の一つにNHK第1の「音楽の泉」がある。1949(昭和24)年に放送開始のクラシック音楽入門番組。日曜の朝、布団の中で聴くとトロトロ気分で二度寝に誘われる

▼シューベルトのピアノ曲「楽興の時」に乗って、今年3月までは「お話は皆川達夫さんです」の案内で始まった。西洋音楽史家皆川さんの柔らかな、それでいて枯れた語り口に長く親しませてもらった

▼3月29日の放送の最後に「体調にやや不安を覚えるようになりました」と番組を降りられた。88年に解説役になって31年余り。クラシックの魅力を分かりやすく楽しく淡々と伝えてきた

▼著書も多い。「洋楽渡来考」という表題も。最初に渡来した西洋音楽はどんなものだったのか。皆川さんの渡来考は、隠れキリシタンが口伝えで継いだ祈りの歌「オラショ」研究に及んだ。オラショとグレゴリオ聖歌との関係を明らかにしてイタリア政府から功労勲章を受けている

▼学術的業績を、隠れキリシタンの里・長崎県平戸市の生月島を何度も訪ねて積み重ねた。西洋からの古楽が形を変えて継承された史実は、研究者の心を熱くした。「長く厳しい弾圧の中、歌い継がれてきたことは奇跡に近い」。そんな言葉が本紙に載ったこともある

▼番組を終えて約3週間後に老衰による訃報を聞いた。92歳。九州の小さな島で掘り起こした音楽の古い泉を、探究心の源泉にした人だった。

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