コロナ特措法 混乱招いた権限の曖昧さ

西日本新聞 オピニオン面

 国家の危機を想定した法律があっても、それが本番ではうまく機能せず、社会の不安や混乱をむしろ助長しているのではないか。新型コロナウイルス対策のための改正新型インフルエンザ等対策特措法のことだ。

 国と地方の権限の線引きが曖昧で、経済活動の制限やそれを解除する出口戦略を巡って摩擦が生じるなど、諸施策は迷走の様相を呈している。政府や国会は法の在り方や運用の問題点を洗い出し、見直しの議論も進めていくべきだ。

 混乱の大きな要因は、政府が特措法に基づき3月28日に定めた「基本的対処方針」が次々に変更され、自治体がその対応に振り回されている点にある。

 特措法では、国が対策の総合調整を行い、休業の要請や指示など具体的措置は基本的に都道府県知事の権限で行う、とされている。ところが政府は東京、大阪、福岡など7都府県に緊急事態宣言を発令した4月7日に対処方針を改定し、自治体による措置は国と協議の上で行うとの規定を盛り込んだ。

 これにより、幅広い業種に休業要請の網をかけようとした東京都が方針変更を迫られるなど自治体側に混乱が生じた。政府はその後、4月16日に緊急事態宣言の対象を全国に広げ、5月4日にそれを延長するなど計3度、対処方針を変更した。

 特に影響が大きかったのは、感染が深刻な13の「特定警戒都道府県」の設定だろう。最初に緊急事態宣言を出した7都府県に北海道や愛知などを加え、他県と区別した。特措法にこうした用語や手法の定めはなく、自治体側の困惑は広がった。

 対処方針は感染の状況と抑止策が詳述されている一方、出口戦略に関する具体的な記述はない。大阪府はその点を批判し、休業要請などを解除する独自の判断基準を発表した。これに対し国は、判断基準を作る責任は知事にある、と容認の立場を示したため、他県が大阪に追随する動きが出ている。今後、対応にばらつきが生じ、混乱が広がる懸念も否定できない。

 改正特措法はコロナウイルスを対象に加えたもので最長2年間の時限措置である。これを疑問視し、国と地方の役割分担などをより明確にした恒久法の制定を求める声もある。コロナ禍の先が見通せないだけでなく、新たなウイルスによる感染症にも備える必要があるからだ。

 特措法改正の際、国会では、政府のコロナ対策を第三者的な立場で検証する作業や、感染症に特化した危機管理組織の新設検討を求める付帯決議が行われた。未曽有の事態の克服にはさまざまな困難が伴うが、これらの取り組みも待ったなしだ。

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