「てんでんこ」できないペット 預け先、非常用品…入念な準備を

西日本新聞 くらし面

新局面 災害の時代―後悔しない備え⑭

 「津波てんでんこ」という言葉をご存じでしょうか。「津波が来たら、てんでんばらばら1人で高台へ逃げろ」という、東北・三陸地方の言い伝えです。2011年東日本大震災で、家族が各自でそれを行うのは、かなり厳しいという現実を突きつけられました。

 宮城県南三陸町の津波被災調査のとき、防災庁舎付近で住宅が流された家のお嫁さんは、足の不自由なおしゅうとめさんと犬3匹を置いて逃げることはできないと、家に残り一緒に亡くなったと、お嫁さんの息子さんから聞きました。

 津波の被災地ではペットだけでなく、イノシシなど野生動物の遺体もよく見かけます。動物で地震予知ができるのではと期待された時代もありましたが、現時点では不可能です。発災時は生存自体が難しく、飼い主がペットを守るしかないのです。

 ペット用品は避難所には通常ありません。非常用持ち出し袋に、ペット用品に加え、ケージからしばらく出せないことを想定して小ぶりなキャンプ用テントを用意している方もいます。

 浸水や土砂災害が予想される区域にお住まいで、ペットがいるご家庭は早めの避難が大切です。自治体の緊急速報メール(エリアメール)だけでなく、気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」で雨雲の流れを事前に確認しましょう。

 昨年、洪水に襲われた佐賀県大町町の親子は「飼い猫を避難所に入れてもらえないと知っていたので、浸水しても家に残っていた。救命ボートで助け出される際、おびえた猫が隠れてケージに入れるのに20分かかり、待ってもらった」と話しました。避難所のペット受け入れ問題が解消されない限り、そのことで人命が失われる恐れがあります。

 一方で、浸水後に命がけの救助活動をさせずに済むよう、浸水想定区域外にペットの預け先の候補を複数準備するなど、入念な段取りをしておくのも飼い主の責任です。危険が迫る中、ペットと自宅に残ることを理由に「逃げません、ほっといて」と言われても、救助隊員や消防団員は見捨てることなどできません。

 今月、帰省先の山梨で新型コロナウイルス感染が確認された後、高速バスで帰京した女性がいました。自宅にペットの犬がいたがための行動だったようです。アニコム損保が首都圏限定で、感染した飼い主の代わりに無償でペットを預かるプロジェクトを始めています。残念ながら九州では、まだ行われていません。

 はたからは「たかがペット」と見えても、飼い主にとっては家族の一員。血縁、地縁、知り合い頼りにしない支援システムも整備しない限り、災害のたびに飼い主の犠牲だけでなく、救助隊の命が危険にさらされることが繰り返されます。感染症の流行時も同様で、日本社会が真剣に向き合わなければならない課題です。(九大准教授 杉本めぐみ)

 ◆備えのポイント 香港で2月、犬が新型コロナに感染したケースがありましたが、ペットから人への感染は確認されていません。ペットの体調が悪い時は不必要な接触を控えることなど、大分県が見やすいペットの新型コロナ情報を随時更新しています。ホームページでご確認ください。https://www.pref.oita.jp/site/doubutuaigo/petgyou-covid19.html

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府生まれ。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て、2014年度から九州大助教、20年度から准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。在インドネシア日本国大使館経済班員として2004年スマトラ沖津波の復興と防災に携わる。「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」メンバーとして福岡県防災賞(知事賞)受賞。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

 

佐賀県の天気予報

PR

佐賀 アクセスランキング

PR

注目のテーマ