にぎわい戻せるか、営業再開に交錯する希望と不安

 福岡県を含む39県で新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言の解除が決まり、自粛を余儀なくされてきた飲食店の中には、早くも普段の営業に戻ろうとする動きが見られた。安堵(あんど)の声が広がる一方、「にぎわいが戻るのか」との不安は根強く、日常が戻ることで再び感染が拡大する懸念も拭えない。ナイトクラブやバー、スポーツジムなどの特定業種は解除の対象外となり、先が見通せない状況が続く。

 「通常営業再開します!」。14日夕、福岡県久留米市の「原古賀焼肉(やきにく)やきにく屋」の窓には大きく張り紙がされていた。

 1カ月余り、弁当の販売でしのいできたという代表の鷲崎賢太さん(33)は「宣言解除の一足先になったが、すぐにでも開けないと苦しかった。徐々に元に戻していきたい」。休ませていたアルバイトもマスク姿で復帰。テーブルを一つおきに使うなど、感染防止に心を砕く。開店直後に訪れた市内の会社員男性(46)は「友人からおいしいと聞き、再開したら来ようと思っていた」と笑顔で肉を焼いていた。

 ただ、ウイルスの終息が見えない中、今後の客足に不安を募らせる店主は少なくない。北九州市小倉北区の繁華街で炉端焼き店を営む男性(56)は「どの店も体力を失っている。街に活気が戻るには、相当な時間がかかるのでは」と険しい表情を浮かべた。

 福岡の観光名所でもある屋台。福岡市・天神で営業する経営者たちは、利用客の人数制限や入店前のアルコール消毒など共通の対策を検討中だ。屋台「博多っ子純情屋台喜柳」の迎敬之さん(45)は、15日夕に営業を再開する予定で「どの店からも感染者を出さないよう協力し、にぎわいを取り戻したい」と意気込んだ。

 一方、休業要請が継続される業種も少なくない。

 臨時休業中の福岡市中央区のスポーツジム「トゥザベスト」は、会員向けにインターネットでのトレーニング指導だけに営業を限る。経営する有吉弘樹さん(45)は「何とか食いつないでいる状況。再開して感染者が出ればバッシングされてしまう」。

 休業中も支払う従業員の給料や家賃などの負担は重い。九州一の繁華街、同市・中洲でスナックを経営する男性も「このままでは干上がってしまう。休業も5月末までが精いっぱいだ」と漏らした。

 長く続くコロナ禍。人との間隔を確保することなどを求める「新しい生活様式」も提唱され、今後の社会への影響は計り知れない。「お客さんの生活スタイルも変わった。歓楽街の文化自体はなくならないにしても、今後は変わらざるを得ないでしょう」。中洲の高級クラブで働く40代女性は淡々とした表情を見せる。「私も、中洲から足抜けする良い機会だと思っています」。昼の仕事に就こうと、資格取得のための勉強を始めるという。

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「様子見」の市民も

 長く続いてきた営業自粛の緩和に、利用客側からも安堵と不安の声が聞かれた。天神の新天町商店街を歩いていた福岡市中央区の塾講師の男性(30)は「1人暮らしで人と会えないのがつらかった」と笑顔。テレビ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を通じて友人と話しても「コミュニケーションが取りにくくかった」という。

 同区の女性会社員(37)は商業施設などへの客の集中を懸念する。「お酒を飲みに行きたいし、服を買いにも出掛けたいのに、どこまで出歩いていいのか分からない。しばらくは様子を見たい」。慎重に言葉を選んだ。

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