九州の緊急事態 解除は安全宣言ではない

西日本新聞 オピニオン面

 一歩前進ではある。ただし、これは「安全宣言」ではないことを肝に銘じる必要がある。

 政府はきのう、新型コロナウイルスの特別措置法に基づき全国に出していた緊急事態宣言について、一部条件付きながら39県を対象から解除した。重点的に対策を進める「特定警戒都道府県」だった福岡県も含め、九州7県は全て解除された。

 緊急事態が福岡や東京など7都府県に宣言されたのは4月7日だった。その後、市民の外出自粛や企業の在宅勤務推進、飲食業や商業施設の長期休業などが相まって、新規感染者は大幅に減少した。一時は福岡県だけで1日に40人を超えた感染確認は、5月13日までの1週間は九州全体でも1桁まで減った。

 患者急増で切迫していた医療の現場も、一般病院の協力や無症状者・軽症者向けの宿泊施設の確保によって、病床に一定の余裕が生まれている。今回の解除の判断は妥当だろう。

 だが、楽観はとても許されない。いったん終息に向かい、外出や休業の制限を解除した途端に集団感染が発生するケースが海外で続いている。感染拡大の再燃が懸念される国もある。

 日本でも多くの人々がこれまで我慢に我慢を重ね、感染拡大を防いできた。その努力が小さな気の緩みで水の泡となる恐れはいつでも、どこにでもある。「3密」を避ける、マスクの着用、手洗いの徹底といった感染防止策は、当面の生活習慣として続けることが肝要だ。

 宣言が解除された地域は、飲食や小売りなど幅広い業種で営業が段階的に再開されていく。美術館や図書館といった公共施設の多くも再開し、休校が続いた学校も徐々に始まるはずだ。不特定多数の人が利用する店舗や施設は、徹底した感染予防対策の継続を原則とすべきだ。

 特に、重症化リスクが高い高齢者、基礎疾患のある人が利用する介護施設や医療機関は警戒を緩めず、集団感染を防ぐ万全の対策が求められる。

 解除にはなったものの、市民の多くが「身近に感染者がいるのではないか」という不安を抱いているだろう。諸外国と比べて日本のPCR検査数が極端に少なく、感染の実態がよくつかめていないためだ。

 厚生労働省はインフルエンザでも使われる抗原検査の簡易キットを承認した。精度は低いものの、その場で検査でき、短時間で結果が出る。PCR検査の拡充を急ぎながら、簡易キットもできるだけ活用すべきだ。

 感染が再び拡大した地域には緊急事態宣言の再発令も検討される。これまでの厳しい自粛生活に逆戻りしないためにも、油断は禁物である。

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