オンラインでは実技できない…農・工業、水産高校生がコロナでピンチ

西日本新聞 一面 郷 達也

教諭ら「感覚も技術も身に付かない」

 新型コロナウイルス対策として各地でオンライン学習が広がる中、職業教育を行う農工業や水産などの専門高校が頭を悩ませている。生徒が特殊技能を身に付け、国家資格取得にも欠かせない航海などの実習・訓練は、安全にも関わり遠隔授業では行えないためだ。緊急事態宣言が一部地域を除いて解除され、学校再開も順次始まっているが、資格試験までに生徒に実践的な経験を積ませられるか、各校は気をもむ。

 「休校中ですが農場の作物はすくすくと成長しています!」

 熊本県立熊本農業高(熊本市南区)のホームページには、農業科の職員が大根を収穫した様子が投稿されている。だが3月に種まきした生徒の姿はない。大根は3年生が5月の体育大会で披露する伝統の「大根踊り」に使う予定だったが、体育大会は中止に。夏に収穫するスイカやトマトといった春作分の栽培実習も取りやめた。

 畜産科では鶏約500羽、牛や豚数十頭を飼育している。本来は毎朝夕、生徒たちが採卵と搾乳実習し、畜舎の清掃もしているが、今は職員だけでの対応だ。

 「作付けから収穫、家畜の育て方はオンラインでは補えない。農場に早く生徒の声が戻ってきてほしい」。草野貴光教頭は、終息の願いを込めて語る。宣言解除を受けて18日から2、3年生の当番実習を計画的に再開。6月1日に待望の授業を再開する方針だ。

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 福岡県立福岡工業高(福岡市早良区)では、機械工作や金属加工などの実習で技能や技術を習得し、在学中に電気工事士などの資格を取る生徒もいる。だが長引く休校で各種技能試験への対策は止まったままだ。

 今月19日から分散登校を始め、29日に全面再開する計画だが、1年生は専用機械や特殊道具の使用法を一から学ばなければならない。安全面からも「道具の使い方などを十分理解することが必要」(同校)で、スタートの遅れは気掛かりだ。

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 「船が校舎みたいなもの。乗らないと感覚も技術も身に付かない」。同県立水産高(福津市)海洋科の押場昭人教諭(53)は、肩を落とす。水産系の高校では航海や漁を学ぶ乗船実習を行えずにいる。

 同校は3年間の課程修了後、専攻科の2年間で専門性を高める。毎年、専攻科1年生10人が実習船「海友丸」に乗ってハワイ沖などで1年間、航海やマグロはえ縄漁を学ぶが、今年は4月の出航を見送った。

 同校は宣言解除に伴い、授業再開後の詳細日程を詰めている最中。洋上実習は9月からに短縮し、航路もハワイ付近を含めない方向だ。専攻科の生徒が目指す国家資格の「3級海技士」の出願には1年以上の洋上実習が必要だが、実習日数の不足は確実。そこで、同校などは座学で補える分を実習と見なしてもらうよう国に要望している。

 ただ学校が再開し実習が可能な状態になっても、船内は「3密」になりやすい。同校は乗船前の2週間を自宅待機にするなどして感染防止を徹底する考え。押場教諭は「生徒たちの精神的なサポートも行い、航海に送り出したい」と話す。

(郷達也)

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