「人生の最後は自宅で」患者の願いに寄り添う 訪問看護を事業化

 「人生の最後を家で穏やかに過ごしてほしい」。看護師の萩平桂子さん(46)=熊本市南区=は22年勤めた病院を辞め、昨夏に訪問看護ステーション「いろは」を立ち上げた。きめ細やかな看護で患者に寄り添い、自宅でのみとりも手助けする。

 「今日もまずは足ば触りますね」。3月末、熊本市東区の丸田睦子さん(85)宅を訪れ、リンパ浮腫を患う右足に手のひらを添えた。上へ、下へ、裏へ。包み込むように。くまなく触るとリンパの詰まった場所が分かる。マッサージし、流れを良くしてやる。

 にこっとよく笑う丸田さんだが、昨年末病院に入院していたころは笑顔はなかった。足は腫れ上がり、目はうつろ。「萩平さんに救ってもらったようなもんよ」。病院と違い、訪問看護は常に1対1。足浴や保湿などのケアを毎日受けることができた。細やかな看護が回復につながったという。「自宅で普通に生活できるなんて。感謝です」

 「いろは」の利用者の多くは、「最期は自宅で」と望む終末期の患者だ。萩平さんの原体験は、四半世紀前の看護学生時代にある。

 老人看護の実習で複数の患者をみとった。「家に帰りたい」と言いながら、望まない場所で寂しく生を終える人もいた。「人を救うはずの医療なのに…。連れて帰ってお世話したい」

 訪問看護に関心を持ち、熊本市医師会の熊本地域医療センターに就職。小児科や脳外科、内科など幅広い分野を経験した。家族の事情や病状から帰宅したくてもできない人や、入退院を繰り返し病状を悪くする患者も多く見た。

 「帰れる状態なら亡くなる前に帰してあげたい。自宅に戻れる環境を私が整えたい」。肺がんの父を自宅で看病したことが自信につながり、開業を果たした。

 萩平さんの看護で、患者の状態が改善するケースが数件出ると、病院からも新たな看護依頼が来るようになった。「おかげ様で忙しくさせてもらっています」とはにかむ。

 今の仕事を「看護の集大成」と言う。医療現場で培った知識や経験の全てが必要だ。何気ない会話も重視する。家族の話、趣味、くせ、人生観などあらゆる情報が看護のヒントになるからだ。

 事業所のモットーは「その人の個性を大切にすること。最期だからこそ少しでも笑顔でいてほしい」。今は後輩と友人と3人態勢だが、さらに拡充したいと意気込む。 (壇知里)

 ▼訪問看護 医療機関や訪問看護ステーションから派遣された看護師が患者の自宅で看護を行うサービス。健康保険法などに基づき主治医やケアマネジャーの指示を受けて行う。要介護認定を受けた高齢者や重度の障害のある児童のほか、「自宅で最期を迎えたい」という終末期の患者の希望にも沿う。県内では介護保険法に基づく事業所が約1530ある。

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