全公立小中校で導入、オンライン授業の舞台裏 熊本市教育長に聞く 

西日本新聞 四宮 淳平

 新型コロナウイルスの影響で全国の学校が休校する中、熊本市が家庭学習をサポートするため全公立小中学校で同時双方向型のオンライン授業に踏み切った。タブレット端末や通信環境の課題もある中、異例の一斉導入はどうやって実現したのか。同市の遠藤洋路教育長(45)にオンラインでインタビューした。

 -オンライン授業に着目したのはなぜか。

 「休校が長引き、また再開の時期も見通せない中で、児童生徒の教育を受ける権利を保障するには、これしかないと思った。ネット環境が『全ての家庭に整っていないからやらない』のではなく、『全ての家庭にないからどうやるか』を考えるのが私たちの仕事だ」

 -機器の具体的な整備状況は。

 「教育長になった3年前、熊本市の学校の情報通信技術(ICT)機器整備状況は全国最低レベルだった。教育委員会は予算要求すらしておらず、整備の遅れも市長まで届いていなかった。市長や議会に必要性を理解してもらい、これまでに小中学生の3人に1台の割合で、タブレット端末を配備した。オンライン授業を始められた理由の一つだ」

 -なぜICT機器を導入してきたのか。

 「新たな学習指導要領が掲げる『主体的・対話的で深い学び』を実現するためには、先生が一方的に話す授業ではなく、子どもたちがICT機器を自在に使いこなす授業が不可欠だと考えた。また、いずれ教科書や資料は、QRコードから画像を読み込むなどデジタル化を前提としたものになると予想し、その通りになっている」

 -タブレットの利用について学校現場はスムーズに受け入れたのか。

 「先生たちには丁寧な研修を重ね、学校に専門家を派遣するなどして、一人一人に理解してもらえるまで使い方を教えた。先生には1人1台のタブレットも配備し、使用に関する制限は一切設けていない」

 -情報流出などへの懸念は。

 「そういう事態が起きた場合は個別に対応すればいい。100人のうち1人に失態があっても、残る99人の使途まで制限する必要はない。先生たちが、子どもの学習支援のために使いたいと思うツールに制限がかかればやる気をなくす。できるだけ自由度を高め、子ども用も最低限のフィルタリングだけにしている」

 -タブレットを使った授業を始めて現場に変化はあったか。

 「授業の主役が、先生から子どもたちに変わっていった。子どもたちがタブレットを使い、自分で調べて深く学び、互いに話し合う。先生はそれをサポートしながら、さらに高いレベルに引き上げていく。3人に1台あれば、3回の授業に1回は学級全員が使える。先生たちは『1人1台の環境でどういう授業をしますか』と問われ始めた」

 -市教委として方向性は示しつつも、運用は現場に任せている印象だ。

 「できるだけ一人一人の先生や子どもの邪魔をしないことを心掛けている。その邪魔をする存在には厳しい。タブレットで動画投稿サイトユーチューブを閲覧できない設定になっていると知ったときは、教育センターの担当者にすぐ電話して修正させた。休校中のオンライン授業でどの学校も一人でも多くの子どもを救おうと考えている最中に、勝手に対象を制限しようとした校長がいたのでしっせきした」

 -オンライン授業の対象は原則、小3以上としている。保護者に不満もあるのでは。

 「当然ある。しかし『うちの子にもオンライン授業を受けさせて』という前向きな不満。そのために何ができるのかを全力で考え、個別にサポートしている。不公平だという人も『何もしない平等』がいいとは思っていないはず。取り組みにも差はある。低い方にそろえるのではなく、いかに高い場所に合わせられるか、だと思っている」

 -長期休校は、今後の学校教育にどう影響していくと思うか。

 「夏休みなどを除いて何カ月も子どもが学校に来ない事態は、これまで考えられなかった。ただ不登校の子どもは前からそういう状況。それに気付いた教育委員会も学校も不登校の子どもに対する見方が変わるだろうし、オンラインでのサポートも行われていくだろう」

 「もう一つは授業。自宅にいて1人で学習するのと、学校に来てみんなで学習するのと何が違うのか。そういう点を意識した授業になっていくだろう。『自宅でオンライン学習した方がいい』と子どもに言われないよう、全ての学校関係者が授業の在り方を考えないといけない」 (聞き手は四宮淳平)

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