ステイホームの44人で共同演奏 福岡ジャズ史上初、ライブ動画を公開

西日本新聞 木村 貴之

 福岡のジャズミュージシャンたちが自宅で歌い、楽器を奏でる場面をつないだ無料ライブ動画が動画投稿サイトユーチューブ」で公開され、静かに話題を集めている。60~20代男女の総勢44人で名曲「When You’re Smiling」=邦題『君微笑(ほほえ)めば』=を共同演奏。新型コロナウイルスの影響でライブハウスの休業が続く中、“ステイホーム”の音色は多くの人に響きそうだ。

 「寂しい時こそ/君思えば/明るい心に/よみがえるよ」-。ライブ動画の画面は5分割され、中央にボーカルの女性陣、両脇にギター、ピアノ、ベース、ドラムなどの男女奏者陣が登場する。画面に並ぶ顔触れで息ぴったりに演奏したかと思えば、次の面々につないでリレー演奏。終盤になると画像と併せて歌声も重なり、最高潮を迎える。

 曲は1920年代に米国で生まれたポップスだが、ジャズの巨匠、ルイ・アームストロングやデューク・エリントンらの演奏で広く知られ、ジャズのスタンダード曲としても定着。動画で演奏されたのは、戦前から日本歌謡界をけん引してきた歌手ディック・ミネさん(1908~91)の録音で知られる日本語詞版だ。

 動画の奏者たちは大半がカジュアルな部屋着姿。背景には障子やたんすなど生活感のある空間が広がり、中には飼い猫と一緒にピアノを弾く場面も。照明などの演出も一切ないが、誰もが表情豊かに歌い、リラックスした雰囲気で演奏。親しみのあるメロディー、心地よいリズムでリレーし、まるで大所帯バンドのライブを一つの空間で視聴しているような気分にさせる。

 再生時間は4分30秒。冒頭には「コロナウイルスのせいで、ライブがのーなったけん。こげん時に、なんば出来るか考えたとよ。短かばってん、セッションしたけん見ちゃってん!」と博多弁満載のメッセージ、エンディングは「ライブで会おうねー!」と一日も早い収束への願いをつづる。

 「演奏動画でファンにライブを疑似体験してもらおう」。4月下旬、ジャズ歌手のチバマサミさん(49)が動画編集のノウハウがあるギタリスト中嶌真平さん(38)と会員制交流サイト(SNS)でやりとりし、こんな思いを込めて企画した。音楽編集が得意なベーシスト松下一弘さん(40)も加わり制作陣が始動。奏者仲間に参加を呼び掛け、各奏者から寄せられた動画を中嶌さんらが急ピッチで編集し、5月連休最終日までに公開。視聴回数は18日現在で約6千回に上る。

 中嶌さんらは曲を8小節ずつ14パートに分けて奏者たちに割り振り(トランペットソロのみ16小節)、それぞれに各パートの楽譜をメールで送付。演奏に関する指示は「テンポは165BPM(1分間の拍数を示す単位)」、「音階キーはE♭(イー・フラット、半音下げた『ミ』の音)」の2点のみだったという。

 中嶌さんは「テンポとキーの指定だけでこれだけの即興演奏ができるとは。40人超による共同演奏なんて福岡ジャズ史上初めてで、すごくゴージャスな内容。しかし、各奏者がメトロノームのリズムだけ感じて部屋で寂しく演奏する光景を思い浮かべると胸が熱くなる。動画は奏者同士の激励でもある」と振り返る。

 新型コロナ対策で発令された緊急事態宣言は福岡を含む39県で解除されたが、ライブハウスについて福岡県は、ナイトクラブやスポーツジムなどと併せて、引き続き休業を要請する方針を発表した。(木村貴之)

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 【出演者】井上有、桜井ゆみ、島塚美智子、轟かおり、豊島ひろ子、西田麻美、MAYUMI、山口葵、チバマサミ、石川雄一、奥田英理、久米博之、篠原真司、田口悌治、中嶌真平、野口裕介、波多江崇行、岡田渉子、緒方公治、小森陽子、斎藤真理子、高橋聡、塚本美樹、月岡翔生子、花田久美子、松元沙綾、吉岡かつみ、小野としたか、杉泰輔、中瀬亨、丹羽肇、松下一弘、森しのぶ、山下暁平、上前景志郎、上村計一郎、武本強志、綱川こうたろう、中村健、野口真吾、野田雅仁、原田迅明、日高潤也、山本ヤマ(敬称略)

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