2度の大病経験越え…「こんな時だからこそ」SNSでつなぐ笑い

西日本新聞 社会面 浜口 妙華

 新型コロナウイルスに負けまいと、福岡県豊前市でスポーツクラブを主宰する林政人さん(51)が、ヨガの呼吸法で笑っているような声を出す「笑いヨガ」のリレーを会員制交流サイト(SNS)で始めた。24歳で肺がん、13年後には脊髄腫瘍と、2度の大病で死への恐怖に押しつぶされていた時、笑いが未来への光であることを知った。「こんな時だからこそ、笑おう」

 「ホッホッ ハハハ イエーイ」。手拍子を打ちながら、笑顔の林さんが声を張り上げる。1995年にインドで考案された笑いヨガは、発声で横隔膜などを動かすとともに、笑ったような感覚を脳に与え、活力が湧く効果があるという。

 新型コロナの影響で、運営するスポーツクラブは3月から臨時休業。運動不足や不安の解消にと、SNS上での笑いヨガリレーを発案した。自己紹介を交えつつ笑いヨガをする動画をユーチューブフェイスブックなど四つのサイトに配信。それぞれ最後に友人らを指名、その人が同様の動画を配信し、また次につなぐ方法だ。4月初旬に配信を始め、約20人まではリレー先を把握できたが、その先は不明。今も自分の知らない人たちの間でリレーが続いていると信じている。

 同市出身。強い男に憧れ、中学で空手、高校でキックボクシングを始めた。肺がんが見つかったのは、結婚の翌年。「俺、死ぬのか」。妻の前で毎日泣いた。手術後も後遺症に悩まされ、37歳で交通事故に遭うと検査で脊髄腫瘍が判明。精神的に追い込まれ、パニック障害やメニエール病を併発した。閉所恐怖症でMRI検査もできなかった。

 「体を鍛えてきたのに心は弱かった」と情けなさを抱えた入院中、同じ病室の半身不随の高齢男性が気になり始めた。食事中も不自由な手でご飯をこぼしているのに常にニコニコ。笑みを絶やさない。自分より不自由なのに、明るい光を放って見えた。笑う男性の周りで、見舞客や病院職員もつられて笑う。「笑顔でいれば、優しくなれるのか」。とりあえず笑ってみようと、口角を上げる練習から始めた。最初はぎこちなかった笑みが、自然と浮かぶようになっていった。

 リハビリで人の体に興味を持ち、トレーニングのセミナーなどを受講。41歳からスポーツ指導員の道へ。右半身は力が入りづらい上、3年間は収入もほとんどなく、貯金を取り崩して乗り越えてきた。

 緊急事態宣言の解除後も、会員500人のクラブ再開の見通しは立たない。それでも笑顔で前を向ける。「光を待っているより、こちらから光を出しましょう。それが笑顔であり、笑いです」 (浜口妙華)

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