コロナで孤立するDV被害者…20年苦しんだ女性「1人でも多く救って」

西日本新聞 くらし面 河野 賢治

 新型コロナウイルス対策の外出自粛で家族一緒の時間が長くなり、ドメスティックバイオレンス(DV)と児童虐待のリスクが増している。失業や休業のストレスが被害を生みかねず、暴力を振るう側の目があるため助けも求めにくい。両親などから約20年間、暴行や金銭搾取を受けた九州の女性(40)は「加害者の支配と監視が強まる」と、コロナ禍の中、対策の充実を望んでいる。

 女性は幼少時からほぼ毎日、両親に殴られた。「生まれてこなくてよかった」。言葉でも傷つけられた。

 家で殴られ、物を投げつけられ、割れた窓ガラスから外に蹴り出されたこともある。真冬の凍える寒さの中、血だらけで耐えた。

 「おまえが悪いと言われ、そう思い込んでいた」

 思春期の頃。ただ一人、優しかった兄に性的暴行を受けた。自分が悪いんだと思った。それでもつらく、手首を刃物で切った。

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 暴力から逃れようと遠方に就職したが、10年ほど勤めると、月200時間を超す残業でうつ病になった。実家に戻らざるを得ず、再び同じ目にあった。

 両親にたたかれ、数カ月おきに10万~30万円を奪われた。それ以前は1回100万円以上のときも。夜中に寝ていると、理由もなく首を絞められた。「もうやめて」。泣いて訴えた。

 転機は30代半ば。うつ病のかかりつけ医に事情を話すと驚かれ、支援団体を紹介された。そこで初めて、児童虐待やDVに当たると知らされた。実家を出るよう促され、飛び出した。

 「物心がつく頃から『おまえが悪い』と虐待やDVを受けると、洗脳のように被害意識がなくなる。そこが問題。これが原因で相談しない人は多いと思う」

 コロナで外出がままならない今、女性は懸念を抱く。加害者がそばにいるため電話できず、メールも見られてしまわないか。窓口相談は「こんな時、なぜ外出するのか」と疑われないか-。監視が強まり、通常より声を上げにくいと思う。

 加害者は虐待やDVの相手を孤立させようとすると、経験で感じる。今はその危険が増していると言う。

 「普段と違う行動をし、相手に気付かれるのが一番危ない。焦らず、準備をして動いてほしい」

      ∞∞

 女性はDVの捉え方にも苦しんできた。日本ではDVを配偶者や恋人間の暴力とする傾向がある。DV防止法も支援制度も、親やきょうだいから被害者を救うには不十分だと思う。

 一度だけ足を運んだ警察には「親子げんか」と相手にされなかった。「私のような人は逃げ場がない」

 コロナで社会が苦しんでいる今、女性はあえて提案したいことがある。

 「DVや虐待の専門知識のある支援団体や警察が、公園やスーパーを見回って歩いてほしい。『DV対策強化中』などと書いた腕章やビブスを身に着けて」

 実家にいた頃、女性はよく深夜に公園まで運転し、車中で一夜を明かした。自室は父母が怒鳴り込んでくるため。同様に1人で来ている女性がおり、「あの人もそうかな」と思った。

 「待ち合わせでも休憩でもないような人、巡回する支援団体をちらちら見る人に、声を掛けてほしい」

 歯科の無料健診にも期待する。数年前、無意識に強くかみしめることによる奥歯の傷みを歯科医に告げられ、「暴力を受けていますか?」と言い当てられた。虫歯の多さで虐待の兆しをつかむ学校歯科健診のような場を、増やしてほしい。

 女性は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、今も家族の影におびえる。繁華街を避け、部屋にいることが多い。「1人でも多くの人を救ってください」。願いを語った。 (編集委員・河野賢治)

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