1日4分で筋力アップ、注目の運動「HIIT」 血糖値の改善にも

西日本新聞 くらし面 佐藤 弘

 健康診断のたびに指摘されながら、なかなか実行できないものの一つが運動だろう。そんな中、体を1日たった4~5分動かすことで、筋力アップや血糖値の改善などにつながるという運動「HIIT」(ヒット)が注目されている。

 福岡市博多区のみらいクリニック(今井一彰院長)トレーニングルーム。「あと10秒。頑張って足上げてー」。時計を手にしたインストラクターに励まされながら、60代の男性2人が、懸命に体を動かしていた。

 運動の中身は、膝を曲げ、腰を落としては立ち上がる屈伸運動「スクワット」や、ジャンプして足を開閉しながら、手で弧を描く「ジャンピングジャック」など4種。一つずつ全力で20秒間やっては10秒休憩のセットを、2回繰り返す。

 1巡目こそ手足は動いていたが、2巡目はへとへと。最後のメニュー、その場で大きく足踏みする「もも上げダッシュ」では、必死の形相を浮かべる男性たちの足は床から5センチと上がらない。5分足らずだが、運動後の荒い息づかいは、しばらく収まらなかった。

 休憩(10~30秒)をはさみながら強度の高い運動(20~60秒)をいくつか組み合わせて行う。これが高強度インターバルトレーニング「HIIT」(High-Intensity Interval Training)の基本形。クリニックでは要介護状態になるのを防ぐ「フレイル外来」の一環で取り入れ、効果を上げているという。

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 HIITを終えた男性(66)に話を聞いた。福岡市内で会社を経営しているというこの男性の場合、運動は月1回のゴルフくらい。日常的に体を動かすことはあまりなく、室内でつまずくことも多い。妻に「このままじゃ、車椅子生活になるよ」と諭され、昨年7月から週1回クリニックに通い、HIITなどで30分、汗を流すようになった。

 それ以外は毎日の飲酒など、食生活も含めて以前通りだそうだが、多過ぎると動脈硬化などの危険因子になる総コレステロール値が324から263に低下。血液の状態が良くなった効果か歯周病が著しく改善し、かかりつけの歯科医師に不思議がられたという。

 「きついけど時間はほんの少し。今は、これをやらないと1週間が終わらない感じ」。男性は軽い足取りでクリニックを後にした。

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 この程度の運動で、なぜ効果が出るのか。今井院長の説明はこうだ。

 運動には、酸素を取り込みながら行い脂肪の燃焼などつながる「有酸素運動」と、息を止めて行い筋力や瞬発力の向上につながる「無酸素運動」がある。

 前者はジョギングやウオーキングなど、後者は筋肉トレーニングや短距離走などといった別メニューで行う。一方、HIITは短時間・高強度の運動で体を追い込み、心拍数を自分の限界(最大心拍数)に近いレベルまで上げられるので、二つの運動の目的を同時に達成できるのだという。

 興味深い効果の一つが、運動後のエネルギー消費(体脂肪燃焼)の持続だ。アフターバーンと呼ばれる。最近の研究で、ジョギングのような有酸素運動を20~30分やった場合のアフターバーン持続時間は約2時間だが、4分間のHIITでは最大48時間持続することが明らかになったという。

 運動後も普段より酸素摂取量が増えるため、エネルギーの産生工場といわれる細胞内のミトコンドリアが増加して活性化すると考えられ、糖尿病や高血圧の改善なども期待されるというわけだ。今井院長は「わずか数週間で動きに切れが出て、体が楽になった、疲れにくくなったと実感される方も多い」と言う。

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 階段の昇降のような息が軽く弾む、もしくはそれ以上の強度の身体活動(中高強度身体活動)は、継続時間が10分未満でも積み重ねられることで要介護化のリスクは下がる-。福岡県篠栗町は3月末、九州大、福岡工業大との共同研究成果として、こんな内容の発表をした。HIITの有効性を裏付ける結果と言える。

 「ストイックに長時間運動する必要はない。新型コロナウイルスの感染防止のため在宅を強いられる中、室内で効果的に筋肉の量と質を高められるHIITは、高齢者のみならず、あらゆる年代にとってお勧めの健康法」(今井院長)

 下半身の筋肉量は20代から少しずつ減っていく。記者(59)も今年1月、HIITを始めた。まだ4カ月だが、駅の階段を上るのが苦にならなくなっている。

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