「長崎原爆の日」祝日化を撤回へ 政府の五輪特例案、被爆者ら疑問視

西日本新聞 一面 一ノ宮 史成 下村 ゆかり

 2021年夏に延期された東京五輪・パラリンピックで、五輪閉会日(8月8日)後の交通混雑を緩和するため、平日8月9日の長崎原爆の日を特例で祝日「山の日」とする政府案が撤回されることになった。被爆者らから「『8・9』を祝いの日とするのは、鎮魂と祈りを軽視した発想で、被爆地をばかにしている」などの声が上がっていた。政府は代替案として、日曜の閉会日を「山の日」に、長崎原爆の日を振り替え休日とする方向だ。

 五輪特別措置法改正案は東京都内の交通環境を改善し、大会関係者や外国要人がスムーズに移動できるよう、開会式(7月23日)や閉会式前後の平日を21年に限り祝日とする内容。政府は、今国会に提出する。

 この中で、例年は8月11日の「山の日」について閉会式翌日の8月9日に移動させるとしていたが、今月19日に開かれた自民党の政調審議会では異論が相次いだ。長崎が地盤の冨岡勉衆院議員(比例九州ブロック)らが「長崎にとっては特別な日であり、悲しみに沈む日。祝日は絶対に受け入れられない」と反発、改正案の了承は見送られた。公明党も受け入れなかった。

 長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長(80)は西日本新聞の取材に対し、政府の姿勢を「五輪延期に伴って、単純に祝日の日程をスライドさせるような感覚を疑う。まるで原爆の惨禍を忘れているかのようだ」と憤る。その上で、「五輪が本当に平和の祭典であるならば、政府は閉会式を終えた外国要人たちに被爆地の現実を見るよう、長崎訪問を呼び掛けるべきだ」と求めた。

 こうした事態に、菅義偉官房長官は20日の記者会見で改正案について「与党の指摘も踏まえ、引き続き検討する」と表明。関係者によると、政府は来週にも21年8月9日を祝日ではなく、振り替え休日とする代替案を与党側に提案する見通しだ。冨岡氏は「長崎の人たちに寄り添う形で再考してくれたのは良かった」と話した。

(一ノ宮史成、下村ゆかり)

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