長崎の観光戦略に影落とす 行政混乱、市民感情も悪化

西日本新聞 社会面 野村 大輔 西田 昌矢

クルーズ船集団感染1カ月

 長崎市に停泊中のイタリア籍クルーズ船「コスタ・アトランチカ」で発生した新型コロナウイルス集団感染は、最初の感染確認から20日で1カ月。船は月末に出港予定で、乗員は順次帰国している。クルーズ船を巡っては、世界中で寄港を拒まれた船が“漂流”し、アトランチカも寄港地は未定だ。集団感染は、クルーズによる地域振興を掲げる長崎県の観光戦略にも影を落とす。

 三菱重工業長崎造船所香焼(こうやぎ)工場の岸壁に全長292メートルの船がつながれている。現地で対応中の災害派遣医療チーム(DMAT)の関係者は19日、横浜港で集団感染が起きた「ダイヤモンド・プリンセス」と比べ、乗員の個室管理が徹底されたことを挙げ、「うまく感染制御できた」と分析。感染者の再検査で20日には18人の「再陽性」が判明したが、600人超の乗員で救急搬送が7人にとどまった点は一定の評価をした。

 だが、県関係者からは「幸運だったにすぎない」との声も聞かれる。検疫法が定める手続きを終えたアトランチカの乗員の健康管理は寄港地の長崎市が担う。1月末の入港から約4カ月に及んだ長期滞在中の感染は想定外で、市は県に支援を求め、県は自衛隊に災害派遣を要請、ウイルス検査は長崎大の協力でしのいだ。149人の陽性が判明した「動かぬクルーズ船」は市の対応力を超え、地域医療の逼迫(ひっぱく)も懸念された。

 市民感情も悪くした。三菱は「乗員が下船することはない」と説明したが、実際には通院や買い物など乗員の出入りでウイルスが持ち込まれたとみられ、地元行政は対応に振り回された。運航会社コスタクルーズは会見を開かなかった。

 長崎をはじめ九州の港のクルーズ寄港は、2019年の実績で全国トップ10に4都市が名を連ねる。

 だがダイヤモンドで浮き彫りになった検疫前の「洋上」で感染が広がった場合の責任の不明確さに加え、アトランチカでは検疫後の「岸壁」でも不測の事態があれば地域医療に影響を及ぼすことを明らかにした。感染終息に加え、こうした課題の解決がなければ、自治体がクルーズ船を受け入れるのは難しいだろう。福岡市は「市民の不安を拭い去るため」として入港自粛を求めている。

 長崎港では136億円を投じる2隻同時接岸可能な2バース化が進み、中村法道知事は「安定的に発展させる」と自信をのぞかせる。一方で、地元住民からは「クルーズはもう無理では」との不安も聞こえる。

(野村大輔、西田昌矢)

 

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