10万円申請、30歳記者がやってみた 意外な落とし穴に…

西日本新聞 ふくおか版 山下 航

結局は…オンライン諦め窓口へ

 新型コロナウイルスの緊急経済対策で、全国民に一律10万円を支給する「特別定額給付金」は、マイナンバーカードを使ったオンライン申請を巡るトラブルが相次いで報道されている。30歳の記者はマイナンバーカードをいつも財布にしまっており、暗証番号を記載した書類も手元にある。「これなら簡単に申請できるはず」。自信満々で手続きを進めたのだが…。

 5月上旬、マイナンバーの専用アプリ「マイナポータルAP」をスマートフォンにインストールし、手続きに着手した。まず戸惑ったのは「券面事項入力補助用」という聞き慣れない名前の暗証番号(数字4桁)を求められたこと。交付時の書類に自分で記入していた4種類の暗証番号のうち一つを入れ、マイナンバーカードにスマートフォンをかざすと、氏名、住所、生年月日などが自動入力された。

 振込口座の指定やキャッシュカードの写真のアップロードなどを行うと、先ほどとは別の「署名用電子証明書」(英数字6~16桁)という暗証番号を求められた。手元の書類にあった番号を入れると、なぜか画面には「失効しています」と表示された。オンラインでは暗証番号の再設定はできず、区役所の窓口に出向く必要があるという。完了まであと一歩なのに、これ以上手続きは進められず、泣く泣くアプリを閉じた。

 翌日の午前10時前、小倉北区役所を訪れた。市民課の窓口前にはマイナンバーカード関連の手続きをする人を含めて20人ほどが呼び出しを待っていた。庁内を行き交う人は多く、職員や来庁者のコロナ感染リスクが気になった。

 私の暗証番号は、なぜ失効していたのか。窓口の担当者からは「署名用電子証明書は発行から5回目の誕生日を迎えたり、住所や氏名を変更したりすると失効する」との説明を受けた。今回有効だった方の暗証番号はカード自体の有効期限(発行から10回目の誕生日)まで使えるという。

 私は2016年に当時住んでいた佐賀県でマイナンバーカードを作成。翌年に転勤で小倉北区に引っ越した。その際に署名用電子証明書の暗証番号を再設定する必要があったが、なぜか再設定していなかった。経緯はさっぱり記憶にない。

 署名用電子証明書はウェブで確定申告ができる「e-Tax」などで使うという。北九州市の担当者は「e-Taxを使わない人にとって、署名用電子証明書はなじみがない。それが急きょ、給付金の申請に使われることになったことが(混乱の)一因では」と推測していた。

 私は20分ほどで暗証番号の再設定を終え、給付金を申請することができたが、市は窓口の混雑を避けるために「急ぎでない人は郵送での申請に協力を」と呼び掛けている。同市は20日から郵送用の給付金申請書の発送を始めた。

 そもそも暗証番号が4種類もある上、再設定のルールが異なる。名称も「お役所用語」で覚えにくい。政府が数千億円を掛けて導入したシステムは、あまりにもお粗末だと身をもって知らされた。

(山下航)

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