夏の甲子園中止 高3部活に集大成の場を

西日本新聞 オピニオン面

 新型コロナウイルスのまん延は多くの高校生から、スポーツや文化活動の努力の成果を発揮する舞台を奪ってきた。「夏の甲子園」も例外ではなかった。

 8月に甲子園球場(兵庫県西宮市)で開催予定だった第102回全国高校野球選手権大会の中止が決まった。日本高野連がきのう「移動や長期宿泊に伴う感染リスクや、大会まで一定の練習期間を確保できず、けがの危険がある」などとして地方大会も含め開催困難と判断した。

 コロナ対策で全国の高校が休校し、部活動も制限され、ほとんどが個人練習だけという状況である。政府の緊急事態宣言が解除された39県では授業再開の動きもあるが、すぐに野球の練習ができる地域は少ない。

 現状を考えると、やむを得ない判断と言えるだろう。

 夏の甲子園は、野球という人気スポーツの全国大会であるだけでなく、スタンドの応援団も一体となった日本の夏の風物詩である。懸命に白球を追う球児のプレーは幾多の名勝負を生んだ。熱戦に郷土愛や望郷の思いを重ね、声援を送ってきたファンも少なくない。

 同じ甲子園を舞台とする春の選抜大会も中止になった。その土を踏むはずだった32校の選手たちが涙をのんだ。「きっと夏に来る」と語った選手もいた。

 卒業後に野球を続けるのは少数といい、幼少期から打ち込んできた集大成として「夏」に目標を置く選手は多い。プロを志望する人や、大学や社会人で野球を続けようという人にとり、夏の大会中止は進路選択を左右する問題だ。

 それぞれの夢や思いをかなえようと、努力してきた全国の高校球児の無念はいかばかりか。

 もちろんこれは野球に限った話ではない。毎夏に開かれる全国高校総体(インターハイ)や金鷲旗柔道・玉竜旗剣道大会も中止が決まった。吹奏楽など文化系の全国規模の大会も例年通りにはいかなくなっている。

 応援してきた保護者、関係者の落胆も大きい。何より情熱を注いできた高校生たちの喪失感を思うと掛ける言葉もない。

 しかし、仲間とともに積み重ねた努力と絆は決して無駄にはならない。今回の苦難を受け止め、思い切り涙を流し、次の目標を定めて、歩みを進めてほしい。この厳しい経験も人生を生き抜く糧になるはずだ。

 大人の側にできることはないか。佐賀県では県高校総体に代わる大会が6月に開催されるという。「3年生には部活動の集大成の場が必要」との判断だ。賛同できる。文化部も含む部活動全体で、高3が進学や就職への区切りとなる舞台を設けたい。各地でぜひ検討してほしい。

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