検察庁法案「取り下げれば矛盾」 黒川氏辞表、検察は信用失墜懸念

西日本新聞 総合面

 緊急事態宣言中に賭けマージャンをした問題で黒川弘務東京高検検事長が辞表を出した21日、安倍晋三首相は今国会で「継続審議」とした検察庁法改正案を取り下げる可能性をほのめかした。首相はこれまで「改正案と黒川氏は無関係」と説明してきただけに、「すぐに取り下げれば、矛盾が生じてしまう」(政府関係者)ジレンマも抱える。一方、巨大組織ナンバー2の失脚劇に、検察関係者の間には「捜査に、国民の協力を得られなくなるのでは」との危機感が広がった。

 検察庁法改正案は、政権が1月に閣議決定した黒川氏の異例の定年延長に端を発しているとみられる。内閣による個別の検察幹部の定年延長を認める特例を含んでおり、これが政治による検察当局への介入を許すとの批判を招いていた。

 21日夕、記者団から改正案を取り下げる考えはないか問われた首相は「国民の理解なくして前に進めることはできない。しっかり検討する必要がある」と答えた。

 「一から議論し直すべきだ」(自民党幹部)、「内容変更は構わない」(官邸幹部)…。黒川氏の不祥事を受け、政府、与党から「撤退」を求める声が出始めており、首相の発言は同じ文脈に沿ったものだ。

 ただ、首相は改正案と黒川氏の関連を一貫して否定してきているため、「取り下げたとしても、これまでの説明との整合性を取るのが難しい」(共産党関係者)。野党は取り下げを要求し、世論にアピールする“王手飛車取り”の作戦で攻勢を強めそうだ。

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 検察内部では、法に抵触する可能性がある賭博行為で自滅した黒川氏に対し、怒りの声が満ちている。国民の信用が失われれば、捜査と公判維持にさまざまな支障を来す。首都圏の検察官は「週刊誌のコピーが職場に回り、仕事にならなかった」。現場の混乱をこう打ち明けた。

 さらに懸念が広がっているのが、「組織中枢の不祥事の監督責任を問う」として政府、与党内で高まる稲田伸夫検事総長への辞任圧力だ。東京高検に勤務経験のある福岡県弁護士会の牧野忠弁護士は「稲田氏が政治の圧力に屈して辞任に追い込まれれば、大きな禍根を残す」。

 元検事総長で、改正案反対の意見書を法務省に提出した松尾邦弘さん(77)も「取り締まる側の検察官、しかもナンバー2の違法なばくちに世間はもっと怒ってもいい」としつつ、「今回の件で、改正案の本質的な問題点から国民の関心がずれることを心配している」と話した。 (東京支社取材班)

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