黒川検事長辞職 「首相の責任」も免れない

西日本新聞 オピニオン面

 余人をもって代え難い-。そんな曖昧な理由で政府が定年延長を閣議決定した東京高検の黒川弘務検事長が、辞職に追い込まれた。新聞記者らと賭けマージャンをしたと週刊文春に報道され、事実関係を認めた。

 賭博罪にも問われかねない検察ナンバー2の不祥事である。言語道断と言うほかない。

 改めて問いたいのは、法解釈を変更してまで黒川氏の定年を延長した安倍晋三内閣の任命責任であり、結果責任である。時の内閣の一存で検察幹部の定年延長を可能にする検察庁法改正案の危うさを、図らずも浮き彫りにしたのではないか。

 首相は「内閣の恣意(しい)的な人事が行われることはない」と批判をかわす一方、「検察官の定年延長は法務省側が提案してきた」とも主張している。世論の風向きが厳しくなったからといって、責任逃れは許されない。

 検察庁法は検事総長を除く検察官の定年を63歳と規定している。黒川氏がこの定年を迎える直前の1月31日、政府は国家公務員法を適用して定年延長を閣議決定した。次の検事総長に起用するための布石ではないか、と野党は追及してきた。

 これに対し、政府は国会で「重大かつ複雑、困難な事件の捜査・公判に対応するため」に必要不可欠な定年延長などと答弁してきた。抽象的で説得力を欠く説明だが、そのあやふやな論法すら破綻してしまった。

 この事態を重大に受け止めるのであれば、まず政府は黒川氏の定年を延長した閣議決定を速やかに撤回すべきだ。前例としたままでは将来に禍根を残す。

 国家公務員法の定年延長は検察官に適用されない。そんな過去の国会答弁で示されていた政府見解が明らかになると、首相は「法解釈を変えた」と言い始めた。政府が今国会成立を見送った検察庁法改正案は、この法解釈変更に基づくものだ。

 政府は秋の臨時国会で成立を目指すとしている。この法改正が実現すれば、検事長など幹部ポストにとどまったまま、内閣の判断で特例として最長3年の定年延長が可能になる。

 黒川氏の定年延長を事後的に正当化するための法改正ではないのか。疑念は深まったと言わざるを得ない。政府は不透明な特例規定を除外するなど検察庁法改正案を見直し、一般の国家公務員の定年を引き上げる法案とは切り離すべきだ。

 新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言下で渦中の黒川氏とマージャンをしていたのは新聞記者や新聞社の社員だった。私たちメディアの姿勢も厳しく問われよう。取材対象との関係や取材の手法に問題はないか。他山の石としたい。

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