帰国後に39度の熱…PCRなぜ受けられない? 検査なおハードル高く (2ページ目)

西日本新聞 一面 山下 真

検査現場、人員は限界 甘い精度、感染増不安

 九州で唯一「特定警戒都道府県」に指定された福岡県では、感染が急拡大した4月中旬の平日に1日3千~5千件の相談があったが、実際にPCR検査に至った数は多くても1日400件程度にとどまった。

 相談数に対し、検査数はかなり少ない。政府の専門家会議が理由の一つに挙げるのが、各地で相談窓口となった「帰国者・接触者相談センター」を担う保健所の人員不足だ。

 「職員が交代で携帯電話を持ち帰り、24時間体制で対応した」。福岡市の保健所関係者は漏らす。市内7カ所の保健所で受けた相談件数は、同市で初の感染者が発生した2月20日は289件。4月上旬には900件を超える日が続いた。PCR検査数も同14日の301件が最多となっている。

 相談対応に加え、感染者や濃厚接触者の行動歴の追跡調査、健康観察、PCR検査の検体輸送という関連業務や、食中毒などの通常業務もある。関係者は「保健師や区役所の職員にも応援を頼み、感染拡大のピークを乗り切れた」と、人員が逼迫(ひっぱく)した状況を明かした。市は相談には適切に対応し、必要な検査は実施してきたという。

 一方で、県内の別の保健所に電話をかけたがなかなかつながらず、相談を諦めたというケースもあった。糖尿病などの基礎疾患がある県内の男性は、高熱が続くので最寄りの保健所に電話をかけたが、けんもほろろに対応されたという。「いろいろ説明されたが、納得できる説明はなかった。保健所の怠慢だ」と話す。

   §    §

 検査を担う医療機関にも事情があった。「医師、患者に感染を広げない防護具を全ての医療機関が準備できるわけではない」。福岡県医師会で感染症を担当する稲光毅医師が指摘する。

 PCR検査の検体採取では、一時品薄となった医療用N95マスクやフェースシールド、防護服の確保が必要となる。対応できる医療機関は限られた。

 同県では現在、車に乗ったまま検体を採取できるドライブスルー方式などを導入した「PCRセンター」の整備が進む。すでに10地区以上で運用が始まり、今後も増やす計画だ。

 そもそも、医療関係者の間ではPCR検査を増やすことに懐疑的な見方も強い。「心配と言う人を全て検査すればいい、というものではない」。九州医療センターの野田英一郎救命救急センター長は指摘する。念頭にあるのは、PCR検査では、感染しているのに陰性となる「偽陰性」が一定の割合で生じることだ。偽陰性の人が自由に動き回れば、逆に市中感染を広げるリスクがある。「100%の精度で診断できればいいが、PCR検査は不確実。日本では外国のように、プライバシーを度外視した患者の追跡調査や強制隔離は講じておらず、クラスター(感染者集団)対策が中心の戦略。専門医はこの背景を踏まえ、患者の病歴や所見から検査の必要性を総合的に判断している」

 感染流行のスピードが鈍化傾向にあるとはいえ、第2波も懸念されている。政府のコロナ戦略がこのまま変わらなければ、再び感染が拡大したとき、より深刻な事態を招きかねない。 (山下真)

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