「撃たずの砲台」86年経過するも…なお頑丈 

西日本新聞 長崎・佐世保版 平江 望

戦跡をたどる 現地からの報告(4) 豊砲台跡(対馬市上対馬町鰐浦)

 対馬最北端の約1キロ手前、対馬海峡を望む小高い丘の上に鎮座している。豊(とよ)砲台跡。世界最大級とうたわれた巨大なコンクリート構造物は、完成から86年が経過してもびくともしない。「頑丈」の言葉がふさわしい。

 第1次大戦後、海峡を確実に制するため山をくりぬいて整えられた。コンクリート壁の厚さは2メートル。着工から約5年の歳月が費やされ、1934(昭和9)年に完成した。

 入り口近くまで車で行ける。赤色のボタンを押すと、照明が30分間点灯する仕組みだ。通路を歩くと、空っぽになった砲具庫や機械室がある。国境を守った「防人(さきもり)」たちの姿を想像した。

 さらに進むと巨大な筒を思わせる空間が現れる。大砲に弾丸を備えて発射する砲身が置かれた場所だ。長さ18・5メートル、重さ108トンを誇った。

 終戦後に解体され、今はぽっかりと開いて空が見える。写真には収めきれないほどの大きさだ。迫力満点の円筒部分は、上部からのぞき込むこともできる。

 射程は30キロあったという。さぞ活躍したことだろうと思いきや、実戦で火を放つことはなかった。「撃たずの砲台」だ。ただ、第2次大戦で日本海側の都市に艦砲射撃の被害が少なかったのは、この要塞(ようさい)のにらみが利いたからだとされる。

 南北82キロと細長い地形の対馬。国境防衛の最前線として明治から築かれた砲台跡は31カ所残り、今も往時をしのばせる。 (平江望)

※記事・写真は2020年05月03日時点のものです

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