「安全法」に香港で反発拡大 中国当局、監視機関設置も

西日本新聞 総合面 川原田 健雄 田中 伸幸

民主派非難、米欧は再考促す

 【北京・川原田健雄、ワシントン田中伸幸】中国の全国人民代表大会(全人代=国会)で、香港での「国家安全法」整備を進める議案が提出され、反発が広がっている。中国本土と同じように「国家安全」の名目で政治的な活動や言論の自由が制限されかねず、香港の民主派は「高度な自治を損なう」と一斉に非難。米国や欧州からも中国に再考を促す声が相次いだ。

 22日の全人代の議案説明によると、新たに制定する法律は、昨年から続く香港の抗議活動で「新たなリスク」が生じたことに対応するのが目的。国家分裂や政権転覆、テロ活動、外国勢力の干渉などを禁じる。

 注目されるのは、議案に「中央政府の国家安全機関は必要に応じて香港に機関を設け、職責を果たす」と明記された点だ。反政府活動を監視・摘発する中国の国家安全当局が香港に出先機関を置き、政府批判の言動だけで香港市民を拘束する可能性も出てくる。

 「(中国の秘密警察である)“国保”が香港の法律を運用することになる。一国二制度は死んだ」。中国に批判的な香港紙「蘋果日報」の創業者、黎智英氏は23日、ツイッターで訴えた。香港メディアによると、台湾など海外移住をサポートする業者には問い合わせが急増。資産を海外に移す動きも出始めているという。

 香港の会員制交流サイトでは、24日に香港島中心部で大規模デモが呼び掛けられているが、香港では新型コロナウイルス対策で公共の場に9人以上が集まることは禁止されている。昨年からデモに参加してきた20代男性は「すぐ警察に拘束される。抗議の声を上げづらい」と明かす。国家安全法は香港立法会(議会)の審議を経ずに全人代常務委員会が制定するため「止める方法が見つからない」と手詰まり感もにじませる。

 懸念を募らせるのは香港市民だけではない。ポンペオ米国務長官は22日の声明で香港自治の「終わりの前兆だ」と非難し、香港市民の自由を尊重するよう強く求めた。トランプ大統領も「(香港の国家安全法が)現実になれば非常に強力な対応を取る」と明言した。新型コロナの感染拡大を背景に米国内で反中感情が高まる中、強硬姿勢を一層鮮明にした形だ。

 英国とオーストラリア、カナダの外相は「深い懸念」を表明する共同声明を発表。欧州連合(EU)の高官も「香港の高度な自治の維持を非常に重視している」とする声明を出し、民主的な議論を促した。

 2014年の香港民主化デモ「雨傘運動」のリーダー黄之鋒氏は、米国など国際社会とともに対中圧力を強める「国際戦線」を継続していくとフェイスブックで表明。「民主化運動は今が正念場だ」と強調した。

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