日田彦山線鉄道断念「死刑宣告のようなもの」 東峰村民、知事に憤り

西日本新聞 社会面 前田 倫之 長 美咲 横山 太郎

 2017年の九州豪雨で被災し、一部区間が不通となっているJR日田彦山線の復旧を巡り、福岡県の小川洋知事は24日、沿線の同県東峰村で初の住民説明会を開いた。鉄道復旧を断念し、JR九州の提示案より専用道を延ばしたバス高速輸送システム(BRT)案での復旧を目指す考えを示した。

 鉄道断念の理由として、年1億6千万円の地元負担に加え、今年2月に国が「最終的に鉄道会社の判断」と復旧方法の考え方を示したことを挙げた。その上で彦山(同県添田町)-筑前岩屋(東峰村)の7・9キロをBRT専用道とし、残りは一般道を走るJR案から、専用道を彦山-宝珠山(同村)の14・1キロに延ばす案を提示。「村内のほぼ全域が専用道となり定時性、速達性は鉄道と遜色ない」などと理解を求めた。

 これに対し、渋谷博昭村長は「知事が鉄道復旧の断念を明言したことは大変重たい。振興のために何を求めていくか、村議会や住民と相談したい」と述べ、26日の臨時村議会以降に最終判断する意向を示した。

 小川知事は説明会後、同県添田町を訪れ、寺西明男町長に鉄道での復旧を断念し、BRTへの転換を受け入れることを伝えた。 (前田倫之、長美咲)

「地域振興と鉄道復旧は別」 東峰村説明会、困惑と不信

 九州豪雨でJR日田彦山線が被災し、福岡県東峰村内の全区間が不通になって間もなく3年。同県の小川洋知事が復旧方法を巡る説明会で初めて村民の前に立った。口にしたのは、村民の願いとは異なる鉄道復旧の断念とBRTへの転換。困惑、不信…。村民はやり場のない思いをぶつけ、両者の溝が埋まることはなかった。

 「何としても鉄道復旧したいと取り組んできたが、壁が厚かった。申し訳ない」。村民ら約120人を前に、知事は頭を下げた。

 最初にマイクを握った住民団体「日田彦山線の完全復旧を求める会」代表の片岡拓之さん(52)は、困惑を隠せなかった。鉄道による復旧を求め、昨年10月から署名活動を開始。村内外の約1万8千筆を集めた。自民党福岡県議団はJR九州案とは異なる復旧案を提示し、県は県議会の求めに応じて復旧後の沿線の地域振興に向けた基金創設を検討。「自分たちの思いがようやく伝わり、村に寄り添ってくれるようになった」。説明会が始まるまでは、そう思っていた。

 この日、知事に思いは届いていないのだと感じた。「基金と引き換えにこぶしを下ろせという姿勢は承服できない。地域振興策と鉄道復旧は切り離して考えるべきだ」

 今年2月のJRと沿線自治体のトップによる会議。「復旧に時間がかかると市民生活にも影響がある」(原田啓介・大分県日田市長)として、早期決着に向けBRTを軸に検討することを確認し、村は孤立感を深めた。「知事が先頭に立ってJRと交渉してくれれば、孤立することはなかった」。村議会議長の佐々木紀嘉さん(68)は憤った。

 樋口朗さん(70)は徹夜してまとめたという鉄道復旧に向けた私案を手に訴えた。「きょうの説明は、死刑宣告のようなもの。何か思い残すことはありませんかと聞きに来ているようなものだ」

 村民の一人は、災害で失われた鉄道をなぜ元の姿に戻すことができないのか、理解できない。説明会後、つぶやいた。「過疎の村にとって鉄道は大事なインフラ。地域の宝なんです」 (横山太郎)

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