ハイタッチ、つば吐きNG…韓国に球音戻る プロ野球開幕

西日本新聞 国際面 金田 達依

 日本では今年、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため「球春」を迎えないまま、はや初夏も過ぎようとしている。韓国でもプロ野球は国民的人気スポーツだ。コロナ禍をいち早く沈静化させた韓国では今月5日、当初予定より約40日遅れてプロ野球が開幕した。だが当面は無観客試合で、選手は感染防止マニュアルの厳守と過密な試合日程を強いられる。ファンはテレビや端末の画面越しに、選手の負担やけがを心配しながら声援を送っている。

 13日に斗山ベアーズを迎えたロッテジャイアンツの本拠地、釜山市の社稷野球場。いつもは内外野席を埋め尽くす熱狂的な地元ファンの姿はない。球場は寒々と静まりかえり、投手が投げ込む際の「あっ!」という気合まで響き渡った。

 今季開幕に当たり、韓国野球委員会(KBO)は感染防止マニュアルや特別規定を策定。選手ら球団関係者が守るべき規則や感染者発生時の対応などを定めた。

 球団関係者は発熱をはじめとする症状の有無や外出先などを自己点検表に毎日記すことが義務付けられた。試合中、素手のハイタッチは自制を求め、つば吐きは禁止。審判やボールボーイらはマスクと手袋の着用が必須だ。相手球団の本拠地を訪れて試合を行う「ビジターチーム」には球団バスでの団体移動を勧告。宿泊施設でのサウナの使用も禁止した。

 関係者に感染が疑われる症状が出ればすぐに本人を隔離。感染が確認されれば接触者も隔離する。感染が拡大した場合はKBOの判断でシーズンを中断する。

 実際の試合では、逆転した時などに興奮した選手が素手でハイタッチする場面も散見される。釜山市を本拠地とするロッテジャイアンツの広報金泰亨(キムテヒョン)さん(28)は「一人の感染者も出すわけにいけない。シーズンを始めた以上は徹底する」と力を込める。

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 試合日程も変則だ。KBOは試合数は減らさず、例年と同じ1球団144試合を行うことを決めた。帳尻を合わせるため、もともと今季は東京五輪に合わせて中断予定だった7~8月に試合を実施するとしたが、ポストシーズンの終了は通常より1カ月遅い11月後半となる見込みだ。

 雨もやっかいな問題だ。全10球団の本拠地のうち、ドーム球場は高尺スカイドーム(ソウル市)のみ。昨季は約60試合が雨天延期になった。今季は振り替えに充てられる日数が限られ、本来試合をしない月曜に開催するか、ダブルヘッダーで消化せざるを得ない。

 負担が増すのが選手だ。そのため軽減策も講じられた。振り替え試合では延長戦を行わず、登録選手数も増やす。暑さの厳しい7~8月は振り替え戦は実施せず、9月以降に回す。

 今季最終盤となる見込みの11月後半は冬間近。最北の球団本拠地ソウルでは11月の最低気温は平均3・2度だ。窮屈な日程と厳しい環境で、選手のけがを心配する声も多い。「ドーム球場が本拠地の球団は日程を消化しやすく、選手の体調管理面でも有利だ」との指摘もある。

 それでも試合数を維持することについて、ある球界関係者は放映権など球団経営上の問題を指摘。さらに「試合が減れば選手の年俸に影響する可能性がある。国際大会で結果を出した選手は兵役が免除されるため、特に若手は1年でも早く活躍したいとの思いがある。試合数の削減は選手側も望んでいないのではないか」と分析した。 (釜山・金田達依)

 【ワードBOX】韓国プロ野球

 1982年に6球団で開幕。現在は10球団で構成される。2リーグの時代もあったが、現在は1リーグ制。各球団はソウル市や釜山市など全国の主要都市を本拠地とする。通常は3月下旬~4月上旬にレギュラーシーズンが開幕。上位5球団が10月のポストシーズンに進み、優勝を争う。昨季の観客動員数は計約730万人。

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