原料あるのになぜ?バター品薄の訳 余った生乳「受け皿」のはずが…

西日本新聞 岩尾 款 古長 寛人

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、国内消費の約8割を国産が占めるバターが品薄になっている。「大手スーパーでも店頭に並ぶのは数日に一度。この問題を取り上げてほしい」との依頼が特命取材班に届いた。依頼主は「全国の休校に伴って原料の牛乳は余っているという報道もあったのになぜ?」といぶかる。緊急事態宣言は全面解除になっても、バター不足は簡単に解消されそうにない。その理由を探った。

 「供給が不安定となっています」。5月中旬、福岡市内のスーパーの家庭用バターの棚はほとんど空っぽだった。「入荷は数日に一度」との張り紙がある。

 業界団体、Jミルク(東京)の調査では、4月下旬の家庭バター需要量は平年比60%増だった。緊急事態宣言が全国に出されて外出自粛や学校休校が続き、家庭でのお菓子やパン作りで需要が増えたとみられるという。テレビ番組で「バターが免疫力を上げる可能性がある」と放映したこともあり売れ行きに拍車が掛かった。

 国内の乳業メーカーも2割程度の増産に動いてはいるが、家庭用バターはアルミ紙で包んだ上に箱詰めする必要があり、業務用に比べて製造の手間がかかる。生産設備なども今回のような需要の急増に対応できる余力はないという。

 在庫も一定程度あるが、多くはカフェやパン製造で使われる業務用。「需要が急激に増えることはこれまでなかったので、家庭用は潤沢でない」(農林水産省牛乳乳製品課)という。

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 牛乳は冬から春先にかけて生産が増え、暑さで牛が疲弊する夏場には減る。一方、需要は冷たい牛乳をおいしく感じる夏場に最も大きくなる。生き物である牛が出す生乳は、大幅な生産量調整が難しく夏場の需要に合わせて生産すると、冬場は余る。こうした事情を踏まえ、国内の生乳は消費期限の短い順に、まず飲用として出荷。次が生クリームやチーズなどの乳製品。生乳を分離して作るバターと脱脂粉乳は保存期間が数カ月あり、最後に位置づけられ、生乳が余った時期に多く製造される。

 新型コロナウイルスを巡っては、3月の全国一斉休校で学校給食の需要が突然消失し、行き場を失った。4月に入ると、緊急事態宣言により外食店やホテルが営業を休止、さらに需要は減った。乳業会社は国の要請もあり、余剰乳を使ってバターや脱脂粉乳の増産に努めた。ただ量が多く、大手乳業会社の処理も限界がある。熊本市の弘乳舎は大手がさばけない生乳を3~4月、4千~5千トン引き受けて大量に余剰乳を処理できる業務用に加工した。通常の倍以上で、従業員約50人が自社製品の製造を抑えてフル稼働で対応したという。同社によると、大手乳業会社以外でバターを製造できるのは同社を含め全国に数カ所しかない。

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 そもそも、生乳の生産量は人口減少や消費の低迷を受けて減少傾向にある。2018年は728万トンで、08年(798万トン)に比べて約9%減った。08年は穀物相場の高騰で外国製バターも値上がり。その影響で国産バターが品薄になった。生産量が減る中で、急激な需要の変動には対応できない構造的な事情がある。

 乳業会社幹部は「今回は初めての全国での外出自粛で、業務用、家庭用ともに需要の大きな変動があった。われわれは貯蔵が効かない生乳を一滴も廃棄しないことを社会的な使命として、対応に当たっています」と語る。 (岩尾款)

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