中国で広がるアフリカ系住民差別 「マスク外交」に冷めた目も

西日本新聞 国際面 川原田 健雄

 マスクをした大勢のアフリカ系住民が道路脇に座り込む。毛布をかぶったり、路上に横たわったりする人もいる。4月にケニアのテレビ局が撮影した中国広東省広州市の様子だ。

 「俺もこの中にいた。何の説明もなく、1年以上住んでいたアパートを突然、追い出された」。広州で建設業に従事するソマリア出身のモハメッドさん(25)は憤る。

 原因は新型コロナウイルス。香港メディアによると、広州市では3月下旬に入国したばかりのナイジェリア人男性の感染が判明。感染したナイジェリア人5人が飲食店を複数回出入りしていたことも分かり「千人以上のアフリカ人が感染した」とのデマが拡散した。「アフリカだけでなくインド、パキスタンなど肌の色が違う人は、みんな家から追い払われた」

 モハメッドさんは警察に駆け込んだが相手にされず、宿泊できるホテルを探して数日歩き回った。「配車アプリでタクシーを呼んでもアフリカ人だと分かると乗車拒否された」。スーパーや飲食店で食料を買えない人や、診察を断られた妊婦もいたという。

 広州の米総領事館は4月中旬に声明を出し「地元警察がレストランやバーに対し、アフリカ系住民に給仕しないよう命じている」と指摘。ケニア外務省なども差別を批判する声明を出した。中国当局は「アフリカの友人の懸念を重視している。正当な要求に積極的に応えていく」との談話を急きょ発表。無料のホテルを用意するなど火消しに回った。しばらくして騒動は収まったが、「中国人への不信感は消えない」とモハメッドさんはこぼす。

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 中国は2000年以降、資源確保や輸出先開拓のためアフリカに接近してきた。18年には総額600億ドル(約6兆4600億円)の巨額支援を表明。世界2位の経済力を背景に、アフリカ諸国への影響力を拡大する戦略だ。

 中国国内に多くのビジネスマンや留学生を受け入れ、特に「世界の工場」といわれる広東省には、中国製品を買い付けに来たアフリカの貿易業者らが数万人規模で暮らすとされる。

 ただ「小非洲(リトルアフリカ)」と呼ばれる広州の居住区では偏見や摩擦が絶えない。6年前から広州市内で貿易業を営むケニア出身のジョセフさん(32)は中国人の冷たい態度に違和感を抱いてきた。「ケニアでは仕事上の付き合いでも一緒に食事して良い関係を築くのが普通だが、中国人はビジネス以外では会おうとしない。まるで、人ではなくカネと付き合っているみたいだ」。「中国人は俺たちを見下している」とぼやく友人も少なくない。

 コロナ禍で噴き出した排外主義は今も続いていると感じる。「道路ですれ違う際に手で口を覆ったり、聞こえよがしに『黒人は嫌だ』と言ったりする中国人もいる」。中国人との取引は大幅に減ったという。

 新型コロナの世界的な感染拡大を受け、中国政府はアフリカ諸国に医療用品や人材を送る「マスク外交」に力を入れる。脆弱(ぜいじゃく)な医療体制と経済の急減速にあえぐアフリカ側からは歓迎の声が上がるが、広州に住むアフリカ出身の20代男性の見方は冷ややかだ。「中国はあくまでもビジネスパートナー。本当の友人ではない」

(広東省広州市で川原田健雄)

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